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①親が限界を感じるは「学校への思い込み」があるから

お子さまが不登校になると、「学校に行かないと将来が心配」と感じる保護者様は少なくありません。なぜなら、親にとっては、学校に通っているほうが子どもの将来の見通しがついて安心できるように感じるからです。
特に、まわりの子どもたちが当たり前のように学校へ通っているのを目の当たりにすると、保護者様の不安は大きくなるばかりです。我が子が、進学、就職、そして社会人として歩んでいくレールから外れてしまうのを不安に感じるのは無理もありません。
しかし、少し立ち止まって考えてみませんか?
学びの選択肢は広がっている
今の時代、学校だけが学びの場所ではなくなってきました。学校に通って勉強する形式にとらわれなくても、以下のような選択肢があります。
- 通信制高校
- フリースクール
- オンライン学習
- 家庭教師
さらに、一度社会に出てから改めて学び直すことも可能です。社会全体が多様な生き方を受け入れる方向に変化し、学校に行きたくない子どもをなんとかして登校させようとする働きかけもなくなってきているのではないでしょうか。
すべての子どもにとって学校が最適とは限らない
学校は、集団生活のルールを学んだり、基礎学力を身につけたり、友達との関係を育んだり、多くの子どもにとって大切な成長の場です。しかし、すべての子どもにとって学校が「最適な環境」とはいえないのも事実です。
たとえば、以下のようなお子さまにとって、学校はつらい場所だと思いませんか?
- 人間関係のトラブルで深く傷ついてしまった子
- 大勢のなかにいると緊張で体調を崩してしまう子
- 学校の雰囲気や環境がどうしても合わない子
このようなお子さまが無理に学校に通い続けると、心身の健康に影響が出る可能性があります。
学び続ける力を育てる
学校に行っているかどうかではなく、自分に合った方法で、無理なく学び続ける力を身につける方が、これからの時代は大切なのかもしれません。
不登校のお子さまに対しては、保護者様の「学校に行かなければ」といった思い込みを一度手放してみてはどうでしょうか?
無理に学校に通わせようとすると、親も子も精神的に限界を迎えてしまいます。お子さまの心に寄り添い「今、この子が安心して過ごせる場所はどこか?」を考える方が、きっと豊かな未来につながるでしょう。
②親は限界を感じないために「今の我が子」と向き合う

親として「こんなふうに育ってほしい」願いや理想を持つのは、とても自然なことです。しかし、そうした理想が強くなり過ぎると、目の前にいる「今のわが子」を見失ってしまうかも。
特に、お子さまが不登校になったときには、いったんその理想や期待を脇に置き「今、子どもはどんな気持ちでいるのか」に目を向ける姿勢が大切です。
親の理想を押し付けない
「これが正しいはず」と決めつけてしまったり、お子さまの気持ちを聞く前に答えを出してしまったりしていませんか?
もしかすると、お子さまは「自分の意見は聞いてもらえない」「話しても無駄」と感じているかもしれません。
親の理想を押し付けず、お子さまを信じて選択を任せる姿勢は「あなたを1人の人間として尊重している」というメッセージになります。
他人と比較しない
また、我が子をまっすぐ見つめ直すには、ほかの家庭と比べたりSNSの情報に振り回されたりせず、お子さまだけを見つめる必要があります。
理想や不安を少し横に置いて、「今、ここにいる我が子」の声に耳を傾けてみてください。その積み重ねが、親子の信頼関係をゆっくりと育てていくでしょう。
③不登校対応で限界を感じたら「親の価値観」を問い直す
不登校のお子さまと向き合うとき、保護者様が無意識のうちに「こうあるべき」といった価値観を子どもに押し付けてしまうケースは少なくありません。
「学校に行くことが正しい」「勉強しなければ将来困る」といった考え方は、保護者様が育った家庭環境や、これまで生きてきた社会から強く影響を受けたものといえるでしょう。
しかし今は、価値観や生き方が多様に広がっている時代です。親世代が当たり前と思っている道だけが、子どもにとっての正解とは限りません。
まずは、自分の「思い込み」に気づいてみませんか?
自分の「正しさ」はどこから来ている?
「なぜ、学校に行かなければならないのか?」
「自分にとって、本当に大切にしたいものは何?」
このような問いかけをしてみると、自分のなかにある価値観に気づくことができます。「正しさ」や「当たり前」は、多くの場合以下のような経験から生まれています。
- 親や先生に教えられた「こうすべき」の考え
- 周囲に褒められた成功体験
- 社会のなかで自然に刷り込まれてきた常識
それは、決して悪いものではありません。ただ、今の時代やお子さまの状況に本当に合っているのかといった視点で見直すことが大切です。
「心配」が無意識の行動につながっていない?
お子さまが不登校になると「このままで大丈夫なんだろうか…」という不安や焦りが押し寄せてくるのは当然です。この感情は間違いではなく、お子さまを思う気持ちのあらわれでもあります。
ただ、こうした不安や焦りが無意識のうちに行動や言葉に現れ、結果的にお子さまを追い詰めてしまうケースもあるでしょう。
たとえば、不登校のお子さまに以下のような声かけをしていませんか?
- 「今のうちに何か始めたほうがいいんじゃない?」
- 「そろそろ勉強も再開しようか」
- 「このままだと取り返しがつかなくなるよ」
これらは一見、前向きなアドバイスにも思えます。しかし、受け取る側であるお子さまには「今のままの自分ではダメなんだ」と感じさせてしまうかもしれません。
④不登校の親に必要なのは「子どもから学ぶ」姿勢
親はつい、「子どもに教えるのが大人の役割」と思いがちです。もちろん、親が教える場面はたくさんあります。しかし、子どもから学べることも、実はとても多いのです。
不登校のお子さまは、大人が当たり前だと思っていることに疑問を持っています。日々のちょっとした会話や行動のなかに、保護者様が忘れていた大切な考えや思いが隠れているかもしれません。
子どもを1人の人間として尊重する
お子さまの考えや感じていることを、まずは「そのまま」受けとめてみませんか?「どんなことを感じているんだろう?」といった気持ちで、お子さまの話に耳を傾けてみてください。
たとえ意見が違っても、わかろうとする姿勢が伝われば、お子さんは「ちゃんと聞いてもらえている」「自分は大切にされている」と感じるようになります。そして、その積み重ねが親子の信頼関係につながるでしょう。
親も一緒に成長していく
お子さまの姿を見ていて、「そんな考え方があったんだ」と思った経験はありませんか?ときに子どもは、大人になるにつれて忘れてしまいがちな「大切なもの」を思い出させてくれます。
不登校のお子さまから学ぶのは、「当たり前を見直す」姿勢かもしれません。「こうするのが正しい」と思い込んでいた自分の価値観が、今の時代には合わないかもしれないと気づくきっかけを与えてくれるでしょう。
親が子どもに教えることもあれば、子どもから教わることもたくさんあります。不登校の期間は、親子で成長していける大切な時間と捉えてみてはどうでしょうか。
⑤不登校の親の限界を解消する変化は少しずつ
お子さまが不登校になり「子どもへの関わり方を変えたい」「自分の考え方を見直してみよう」と思っても、すぐにうまくいくとは限りません。
長い時間をかけて身についた価値観や習慣は、そう簡単には変わらないものです。無理に変えようとすると、余計に心が疲れてしまうでしょう。
小さな一歩に気づく
大きな変化よりも、日々の小さな前進に目を向けてみてください。
- お子さまの話を最後まで聴けた
- いつもより落ち着いて話ができた
- 親の立場からの意見を押し付けなかった
これらも、確かな「変化」です。気づいたことや心がけたことに意味があります。
積み重ねが変化を生む
変化は目に見えるものばかりではありません。不登校のお子さまの様子に大きな動きがなくても、内面では確実に少しずつ成長しているものです。
親子の適切な関わりを積み重ねていけば、やがてお子さまにとって「安心できる居場所」ができるでしょう。この心理的な安全基地で、お子さまは心と身体にエネルギーを貯めていきます。
お子さまの変化は、本当に小さなものから始まります。
- 以前より表情が穏やかになった
- 家族との会話が少し増えた
- 好きなことに取り組む時間が長くなった
変化のペースは人それぞれです。「まだ変わらない」ではなく「確実に歩んでいる」と捉えてみてください。
最後に | 親が限界を感じたら「不登校こころの相談室」へ
不登校のお子さまの対応に「もう限界」と感じるのは、それまで保護者様が必死に頑張ってきた証拠です。そして、その「限界」の感覚こそが大切なサインかもしれません。
これまで当たり前だと思ってきた「学校に行く」といった思い込みや、お子さまへの期待や理想像を手放すのは、簡単ではないでしょう。しかし、保護者様が心にゆとりを持ち、柔軟な姿勢で向き合っていけば、お子さまは安心して前に進めるのです。
お子さまの不登校を、保護者様も一緒に成長できる期間と捉えてみませんか?
「不登校こころの相談室」では、不登校のお子さまの対応に限界を感じた親の気持ちに寄り添います。どうか1人で悩みを抱え込まず専門家に相談してください。