過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は、精神的なストレスや自律神経のバランスの乱れが引き金となって症状が現れます。過敏性腸症候群は、ストレスや自律神経の乱れをきっかけに、心と身体の両面に不調が現れると考えられています。
おもな症状は以下の通りです。
- 腹痛や下腹部の不快感
- 下痢や便秘などの便通異常
- 排便後に一時的に症状がやわらぐ
- 頭痛や疲労感
- 不安感や気分の落ち込み
これらの症状は、学校へ行こうとする朝に強く出ることもあり、お子さまにとって大きな負担となる場合があります。
過敏性腸症候群の診断基準
過敏性腸症候群は、検査だけで確定するのではなく、症状の経過や特徴をもとに診断されます。
代表的な基準として、以下のような項目が用いられます。
- 6ヶ月以上前から腹痛や不調がある
- 最近3ヶ月のあいだ、週1回程度の頻度で症状がある
- 排便をすると症状がやわらぐ
- 排便回数に変化がある
- 便の形状に変化がある
これらのうち複数が当てはまる場合、過敏性腸症候群の可能性が考えられます。
(参考:一般社団法人 日本大腸肛門病学会 過敏性腸症候群について)
過敏性腸症候群の治療

症状を和らげるには、医療機関を受診して薬を処方してもらう以外にも、食事や運動による生活習慣の改善や心理的な面からアプローチしていく治療があります。お子さまの状態にあわせて、適切に改善していくようにしましょう。
生活習慣の改善
規則正しい食生活は、腸内環境を整えるために重要です。消化を助けるためによく噛んでゆっくり食べたり、適度に水分をとったりするなどして、毎日決まった時間に食事をとるようにしましょう。
また、運動も腸の働きを活性化するのに重要です。運動には、ストレス解消のほか、セロトニンの分泌を促進して気分を安定させたり、全身の血行を促進したりして体調を整える効果があります。
薬物療法
生活習慣の改善だけで症状がよくならない場合は、薬物療法も検討します。腸のぜん動運動が、盛んになっているときは抑える効果がある薬を、逆に低下しているときは動きを促す効果がある薬が処方されるでしょう。
また、乳酸菌やビフィズス菌などを含む整腸剤で腸内バランスを改善し、腹痛や便秘などの症状を緩和します。お子さまの体質や症状によって適切な薬は異なるため、医療機関を受診し専門家に適切な薬を処方してもらうことが大切です。
心理療法
過敏性腸症候群における腹痛などの身体的症状は、精神的なストレスの影響が大きいと考えられています。したがって、単に食事療法や薬物療法だけでは改善が見られないケースもあるでしょう。
ストレスが症状を悪化させている場合は、臨床心理士や公認心理師のカウンセリングが有効な治療法です。カウンセリングでは、ストレスの原因や対処方法を探り、リラクゼーション法を学ぶことで症状の緩和が期待されます。症状に合わせたアプローチで改善に向かう可能性があるでしょう。
過敏性腸症候群で学校に行けないお子さまへの対応

過敏性腸症候群のお子さまへの接し方で大切なのは、まわりが症状を理解してお子さまを安心させてあげることです。腹痛を我慢させると症状が悪化する可能性があるため、お子さまの状態をしっかりと把握し、適切なサポートの提供が重要です。
学校に行けないお子さまは、登下校中や授業中にトイレに行けない不安があります。このような状況は、お子さまにとって大きなストレスです。ここからは、お腹が痛くて学校に行けないお子さまへの対応の仕方について解説します。
お子さまのつらさを理解する
まずは、お腹が痛くて辛いというお子さまの訴えを受け止め理解することが大切です。保護者様の理解は、お子さまに安心感を与えます。どのような不安を抱えているのかじっくり話を聞いて、お子さまの気持ちに共感しましょう。
症状がひどいときは、お子さまの体調を最優先してゆっくり過ごすようにします。勉強の遅れや友達との関わりを心配する必要はありません。登校時間を短くしたり、自宅学習を取り入れたりするなどの対応も検討しましょう。
学校と連携する
学校で何かしらの問題がある場合、心理的なストレスから腹痛の症状が出ている可能性も考えられます。お子さまの症状と不安を学校側と共有し、登校や授業について配慮をお願いしましょう。
学校への行きづらさを「さぼり」や「心配しすぎ」などと誤解して対処してしまうと、不登校につながる可能性があります。お子さまの学校生活をサポートしていくには、周囲の理解が欠かせません。学校にスクールカウンセラーがいる場合は、お子さまのケアについて相談することもできます。
無理に登校を強制しない
お子さまが腹痛を訴えているときに無理に登校を促すと、不安やストレスがさらに強まることがあります。
過敏性腸症候群は心と身体が密接に関わっているため、プレッシャーが症状を悪化させる要因になりかねません。
まずは「つらいよね」と気持ちを受け止め、安心できる環境を整えることが大切です。
生活リズムを整える
過敏性腸症候群の症状をやわらげるためには、生活リズムを整えることも重要です。
睡眠不足や食生活の乱れは自律神経のバランスに影響し、腹痛や便通異常を引き起こしやすくなります。
起床・就寝の時間を一定に保つ、朝食をしっかりとるといった基本的な生活習慣を意識することで、少しずつ体調の安定につながります。
当相談室に寄せられる「お腹が痛くて学校に行けない」ご相談

不登校こころの相談室では、「朝になるとお腹が痛くなる」「病院では大きな異常がないと言われたが、学校には行けない」「腹痛をどこまで受け止め、どこから登校を促せばよいのか分からない」というご相談を多くいただきます。
実際のアンケートを見ると、腹痛そのものだけでなく、不安・緊張・学校への恐怖・親子のすれ違いが重なっているケースが少なくありません。
朝の登校前に腹痛・下痢・吐き気が出る
当相談室の初回アンケートでは、登校しようとするタイミングで腹痛や下痢、吐き気が出るという相談が多く寄せられています。
特に「家では元気に見えるのに、学校の前だけ症状が出る」というケースでは、保護者様も判断に迷いやすくなります。
「朝、登校前にお腹が痛くなってトイレに長く籠ることが増え、風邪が治ってからも腹痛を訴えて遅刻することが増えてきました。」
「いつも通り登校しようとすると、腹痛と下痢が出現。」
「体調不良(吐き気、腹痛、下痢)を訴える子を、引きずってでも登校させていいのか。」
「今年に入り、吐き気や腹痛、頭痛の症状を訴えることが多くなり、体調不良にて学校を休む日が多くなりました。」
「登校前に腹痛を訴えるようになり、遅刻や休みが増える。」
「腹痛、頭痛など不定愁訴が多い。」
※事前アンケートより、一部抜粋・編集して掲載しています。
実際のご相談では、腹痛が「学校へ行く直前」「登校を促された時」「別室登校に挑戦する時」など、特定の場面で強く出ているケースが目立ちます。
そのため、当相談室では、腹痛そのものを否定せずに、「いつ痛くなるのか」「休むと落ち着くのか」「学校以外の外出ではどうか」を整理します。
これは、医療機関での確認が必要な身体症状なのか、学校不安や緊張が身体に表れている状態なのかを見立てるうえで重要です。
腹痛がある場合は、まず医療機関で身体面を確認しつつ、同時に「学校に行こうとすると強まる不安」にも目を向けることが大切です。
体調不良を信じてもらえず、親子関係が悪化する
お腹の痛みは外から見えにくいため、保護者様が「本当に痛いのか」「ただ休みたいだけではないか」と感じてしまうことがあります。
しかし、当相談室のアンケートでは、体調不良を疑われたことをきっかけに、親子関係が大きく悪化しているケースも見られます。
「元々、過敏性腸症候群で時々休んでいました。」
「腹痛を訴え休みたいと言ってきましたが、前日夜更かしをしていたので、そのことを指摘し、単位が足りなくなること、将来のこと、今の生活態度などかなり説教してしまいました。」
「そうしたら、『体調が悪いのに信じて貰えない』と、それ以来口も聞かずご飯もろくに食べず、引きこもり学校にも行かなくなりました。」
「一見、体調が悪くなく見える朝の本人への声かけに迷っています。」
「多少の体調不良にも気持ちで負けないよう、自己肯定感を高める事が必要と言われた。」
「腹痛、頭痛など不定愁訴が多い。それを聞く母がイライラしています。」
実際のご相談では、保護者様も責めたいわけではなく、出席日数・進級・学習の遅れ・生活リズムへの不安から、つい強く言ってしまうケースが多くあります。
ただ、腹痛を訴えるお子さまにとって「信じてもらえなかった」という体験は、登校への不安だけでなく、家庭内での安心感も下げてしまいます。
当相談室では、まず症状を受け止めたうえで、登校刺激を入れるタイミングや声かけを一緒に整理していきます。
腹痛への対応では、「休ませるか、行かせるか」だけでなく、親子の信頼関係を崩さずに体調と登校をどう扱うかが重要になります。
腹痛の背景に学校不安・人間関係・進路不安が重なっている
当相談室に寄せられる相談では、腹痛だけが単独で起きているのではなく、学校での不安、人間関係、進路や単位への不安が重なっていることがあります。
腹痛は、本人が言葉にしきれないストレスのサインとして現れている場合があります。
「1月中旬給食時に気持ち悪くなったことをきっかけに、半日登校などを経て、週1登校→完全不登校→週何日か放課後登校していた。」
「別室登校しようとして行けず、それから体調不良や登校刺激を何度も受けたことにより登校できない日が続いている。」
「登校や習い事前に腹痛を訴えるようになり、遅刻や休みが増える。」
「学校に行かないことを責められてから外出不可能になり、完全不登校に。」
「高校3年生で進学を希望しているので、このままでは出席日数が足りず高校卒業も危ない状況。」
「学校に行けていない日は勉強もしている様子がないので、大学受験もできるのか、将来に対する不安が多いです。」
実際のご相談では、腹痛の背景に「給食時に気持ち悪くなった経験」「別室登校へのプレッシャー」「友人から責められた経験」「単位や卒業への不安」などが重なっていることがあります。
この場合、腹痛だけをなくそうとしても、学校場面への不安が残っていると再び症状が出やすくなります。
当相談室では、腹痛が出る場面を整理しながら、学校との連携、登校形態、学習や進路の見通しも含めて支援方針を考えます。
腹痛が不登校と結びついている場合は、身体症状への対応と同時に、学校生活への不安を減らす支援が必要です。
腹痛が長引き、外出や学習にも影響が出ている
腹痛や吐き気が続くと、学校だけでなく、外出、習い事、放課後デイ、学習、友人関係にも影響が広がることがあります。
当相談室のアンケートでも、腹痛や吐き気をきっかけに生活範囲が狭くなっている相談が見られます。
「吐き気でどこにも行けない自分を責めることもあるので、自己肯定感も高めてあげたい。」
「何か不安が出た際に吐き気を感じるようになり、お出かけが難しくなり、放課後デイも一旦お休み中。」
「入学の不安が強く、少し精神が不安定で、吐き気を感じる機会が増えている。」
「本人としても我々親への相談だけだと心許ないようで、カウンセリングの先生に相談してみようかなと言うことです。」
「外出頻度が放課後登校できなくなってから減っている。」
「家では普通に過ごしているが、外出はあまりできていない。」
※事前アンケートより、一部抜粋・編集して掲載しています。
実際のアンケートでは、腹痛や吐き気が長引くことで、「学校に行けない」だけではなく、「出かけるのが怖い」「また気持ち悪くなったらどうしよう」「自分はだめだ」と感じている様子が見られます。
私たちが対応してきた中でも、症状が長引くほど、本人の自己肯定感や活動性が下がり、保護者様も対応に迷いやすくなります。
だからこそ、早い段階で身体面・心理面・学校環境を分けて整理し、無理なく回復できる道筋を作ることが大切です。
お腹の痛みは「ただの体調不良」ではなく、学校生活や自己肯定感にまで影響するサインとして受け止める必要があります。
過敏性腸症候群と不登校の関連性

過敏性腸症候群と不登校の関係は、どちらが先になってどちらが原因になっているのかという単純なものではありません。多くの場合は、相互に影響し悪循環を生み出していると考えられます。
過敏性腸症候群が不登校の原因となる場合
テストや発表などで極度に緊張したりストレスがかかると、腹痛や下痢などの症状が出る場合があります。「お腹が痛くなったらどうしよう」という不安は、登校意欲を低下させます。また、まわりの目が気になってトイレに行くのを我慢すれば、過敏性腸症候群の症状が悪化するケースもあるでしょう。
過敏性腸症候群のお子さまは、症状が出ると授業に集中できません。勉強に対するモチベーションが維持できず学習面での不安があると、ますますテストが怖くなります。このような悪循環から、不登校につながる可能性は考えられます。
不登校が過敏性腸症候群の症状を悪化させる場合
不登校になると生活リズムが乱れ、睡眠不足や運動不足などが原因で腸の調子が悪くなるケースがあります。また、過敏性腸症候群は精神的なストレスや不安が引き金と考えられることから、不登校の状況が過敏性腸症候群の症状を悪化させている可能性もあるでしょう。
不登校になったお子さまは自己否定が強く、心にストレスが積み重なった状態です。ストレスを感じるとお腹が痛くなるのは、脳と腸が密接に関連しており、ストレスが腸の運動や感覚に影響を与えると考えられているからです。
「学校に行けない自分はダメだ」という自己否定は不安やストレスを大きくしてしまいます。ストレスからの慢性的な腹痛は、腸の炎症反応を促進させ過敏性腸症候群の症状は悪化してしまうでしょう。
お腹の不調の裏にある「こころのストレス」に寄り添うために

過敏性腸症候群のような体の不調は、単なる体の問題ではなく「こころのSOS」として現れることがあります。
「また痛くなるかもしれない」「学校に行けない自分はダメかもしれない」そんな不安が重なって、ますます心と体を苦しめてしまうことも少なくありません。
「不登校こころの相談室」では、ストレスや不安を背景にした不登校に特化し、臨床心理士や公認心理師といった専門のカウンセラーがオンラインで寄り添います。安心できる対話の中で、お子さまが言葉にできなかった気持ちを整理し、保護者様も「どう支えればよいのか」を一緒に考えていくことができます。
ただ、いきなりカウンセリングに踏み出すのは不安…という方も多いでしょう。そこで最初の一歩としてご用意しているのが「AI診断」です。数分で答えられるチェック形式の質問に取り組むだけで、お子さまの状態やご家庭の不安を整理するきっかけになり、その結果をもとに最適なカウンセラーをご案内することも可能です。
「心のケアが必要かもしれない」と感じた今こそ、まずはAI診断から始めてみてください。
















