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母子登校を「やめたい」と限界を感じる理由

母子登校とは、お子さまが1人で学校へ行くのが難しいときに、保護者様が一緒に登校し、校門や教室まで付き添う状態を指します。学校に行くのに抵抗があるけれど、保護者様の付き添いがあれば登校できる状態が母子登校です。
付き添いの形はさまざまで、登校時だけ付き添うケースもあれば、休み時間や授業中まで保護者様がそばで見守り続け、必要に応じてサポートするケースもあります。
付き添う理由には、登校しぶりや人間関係の不安、発達の特性などが関係し、一概に「甘え」や「過保護」とは言い切れません。
最初は「少しでも学校に行ければ」と前向きな思いで始まった母子登校も、続けていくうちに保護者様の負担は大きくなります。「もう限界かもしれない」「やめたい」思いが頭をよぎるようになる保護者様も少なくありません。
その理由は、日々の積み重ねによる心身への影響や、先の見えない不安が複雑に絡み合っているからです。保護者様が母子登校に限界を感じる主な理由には、以下が考えられます。
- 生活全体が母子登校に縛られる:
母子登校が日常化すると、家事などの時間がどんどん後回しになっていきます。朝の登校だけではなく、夕方までお子さまに付き添う日は仕事の調整もしなければなりません。
- 周囲に理解されない孤独感:
母子登校の状況は、なかなか他人に理解されにくいものです。「甘やかしすぎでは?」といった無理解な言葉に心が傷つくことも。同じような状況の保護者様と出会う機会も少なく孤独を感じてしまいます。 - 自分を責めてしまう気持ち:
育て方が悪かったのではないかと自責の念を抱えてしまいます。また、母子登校が長引くにつれて「自立できなくなるかもしれない」といった思考に陥り、自信をなくしてしまうケースも。 - いつまで続くのかわからない不安:
終わりの見えない状況に焦りと無力感が募っていきます。母子登校が適切な対応なのか自信が持てず、精神的に追い詰められることに。 - お子さまの将来への不安:
親への依存が強くなってしまう心配や、お子さまの将来への不安が大きくなるでしょう。母子登校が自立を妨げているような気持ちになることもあり、ジレンマを抱える保護者様も少なくありません。 - 相談できる相手がいない:
日々の悩みを誰かに打ち明けたいと思っても、気軽に話せる相手が見つからず悩みを抱え込んでしまう保護者様も多いでしょう。また、家庭内での協力が得られず誰にも頼れない状況が孤立感を深めます。
このように、さまざまな理由から保護者様は母子登校に限界を感じ、「やめたい」と強く思ってしまいます。
しかし、その感情は決して弱さではなく、否定するものでもありません。これまで、保護者様がお子さまのために頑張ってきた証拠でもあるのです。
母子登校の限界サイン

母子登校を続けていると、無理を重ねている自分やお子さまの「限界サイン」に気づきにくくなってしまう場合があります。そのまま見過ごしてしまうと、心と身体のバランスを崩し、親子関係にも影響が出てしまうでしょう。
ここでは、保護者様とお子さま、それぞれに現れる限界のサイン、そして母子登校の心理的リスクについて詳しく解説します。
親の限界のサイン
保護者様が「なんとかしなければ」と頑張り続けていると、気付かないうちに心と身体に負担が蓄積します。
以下のような変化が見られる場合、それは限界のサインかもしれません。
- 睡眠障害(寝つけない、夜中に目が覚める、朝起きるのがつらい)
- 慢性的な疲労感(休んでも疲れが取れず、何もやる気が起きない)
- 集中力の低下(家事や仕事に集中できず、ミスが多くなる)
- 感情の起伏が激しくなる(些細な出来事で涙が出たり、イライラが抑えられない)
- 自分を責めてしまう(ちゃんとできていない自分が嫌になる)
保護者様の心身のケアは、お子さまの心の安定のためにも非常に大切です。
子どもの限界のサイン
母子登校しているからといって、お子さまの心が常に安定しているわけではありません。お子さま自身もプレッシャーや不安を抱えている可能性があります。
期待に応えなければならないといった気持ちが強くなり過ぎると、次のようなサインが現れます。
- 情緒不安定(登校前に泣き出す、不機嫌な時間が増える)
- 体調不良を頻繁に訴える(腹痛・頭痛・吐き気などの不調が続く)
- 自己肯定感の低下(「どうせ自分なんて」といった発言がある)
- 甘えが強くなる(これまでできていたことができなくなる)
- 学校への強い拒否反応(登校時に表情が曇る)
お子さまの心のSOSは、言葉よりも行動や態度に表れやすいものです。無理に登校を促したり保護者様が感情的になったりすると、より不安を強めてしまう場合があります。
母子登校を続けることの心理的リスク
お子さまの安心のために始めた母子登校も、続けていくうちに思わぬ負担や悩みが生まれる場合があります。
たとえば、親子の距離が近くなりすぎて、保護者様が無意識のうちにお子さまのすべてに関わろうとしてしまいます。それは、結果として「過干渉」の状態になる可能性も。
お子さまの立場からすると「なんでも親がしてくれる」状態になります。困難に直面したときに自分で考えたり行動したりする機会が減ってしまうかもしれません。
また、距離が近すぎて親子の感情がぶつかりやすくなったり、どちらかがストレスを抱え込みやすくなる場合もあります。
母子登校は、お子さまが安心して学校に行けるようになるための大切なステップです。しかし、長期化して過干渉な状態に陥ってしまうと、お子さまが自分の足で歩き出すタイミングを見失ってしまいます。
母子登校「やめたい」と思ったときの対処法

母子登校は「もう限界!」「やめたい!」と感じたときは、無理せず一度立ち止まってみてください。保護者様が自分の気持ちに気づいたら、まずは自身の心のケアをして、親子関係を少しずつ見直していく期間を持つのも大切です。
ここでは、母子登校を「やめたい」と思ったとき、どのような視点や行動が保護者様とお子さまにとって助けになるかをご紹介します。
親の心を整える
母子登校は、お子さまのための行動で保護者様の気持ちや時間が後回しになりがちです。「子どものために」とがんばるあまり、自分の疲れやつらさに気づかない方も少なくありません。
まずは、「つらい」「不安」「もう無理かもしれない」……そうした自分の感情に耳を傾けてみてください。
そして、誰か信頼できる方に思いを話す、日記に気持ちを書き出すなどして、感情を溜め込まないようにしましょう。
さらに、「よくがんばっているね」と、自分をねぎらう言葉をかけるのも大切です。自己否定の言葉を重ねるよりも、少しずつでも自分をいたわってあげれば、心にも少しずつ余裕が出てくるかもしれません。
親子の関わり方を見直す
心に少し余裕が生まれたら、親子の関わり方も見直してみましょう。お子さまの不安を和らげるための母子登校だったはずが、いつの間にか「学校に行かせなければ」という目的にすり替わっていませんか?
今のお子さまにとって本当に必要なのは、付き添っての登校でしょうか?それとも「信じて見守ること」なのでしょうか?一度立ち止まり、親としてどんなサポートをしたいのかを見つめ直してみると方向性が見えてくるかもしれません。
「どう思う?」「どうしたい?」といったお子さまへの問いかけは、「自分で考えて自分で決めていい」というメッセージになります。先回りするのではなく、そっと後ろから見守る姿勢が、お子さまの自立心を育てる土台となるでしょう。
ほんの少しの声かけや距離感の調整が、親子関係を良好にするきっかけになるかもしれません。
支援を活用する
母子登校の悩みを、保護者様だけで抱え込む必要はありません。自分だけで解決しようとすればするほど、行き詰まりや不安が強くなってしまいます。
学校の担任やスクールカウンセラー、教育相談機関にいる専門的な知識を持つ方々は、今後の見通しを一緒に考えるうえで頼れる存在です。地域によっては、不登校支援の窓口で無料で相談に応じてくれる場合もあります。
専門家に相談するメリットは、状況を客観的に整理し、保護者様が抱える不安や焦りに寄り添いながら具体的なアドバイスをもらえる点です。話すだけで気持ちが軽くなる場合もあるでしょう。
母子登校に疲れたときのサポートについてはこちらの記事でもお伝えしています。ぜひ、併せて読んでみてください。
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母子登校をやめた後の心構え

母子登校をやめると「これでよかったのかな…」「この先どうしたらいいのかわからない…」と不安に包まれる日もあるかもしれません。そんなときは、今は少し立ち止まる期間だと捉えてみてはどうでしょうか。
ここでは、母子登校をやめたあとに意識しておきたい心構えをお伝えします。焦らずお子さまの心に寄り添ってあげてください。
家庭を安心できる居場所にする
外の世界でうまくいかないとき「家に帰れば安心できる」「自分はここにいていいんだ」と思える環境があると、お子さまの心は落ち着きます。心が不安定なまま無理に前へ進むよりも、しっかりと土台を整えてから行動する方が結果的にいい方向へ進むことも。
保護者様が、お子さまの話に耳を傾ける時間を少し意識してつくるだけでも、お子さまの心はずいぶんと落ち着くものです。
否定したり、誰かと比べたりすることなく、ただ「あなたはそのままで大切な存在だよ」という思いが伝わるように寄り添ってみてください。
復学を急がない
母子登校をやめて不登校になった場合、次はどうするかを決めなければいけないと焦ってしまう保護者様も少なくありません。しかし、学校に戻るかどうかは、あくまで「お子さまが元気を取り戻したその先」に考える選択肢です。
お子さまの心が疲れているときに、無理に学校復帰を促す行動は、逆に不安やプレッシャーを強めてしまうでしょう。
焦らず、まずは家庭で心を整える時間を優先し、お子さまに元気が戻ってから再登校を検討してください。
どの道を選んでも、そこに「安心して過ごせる自分」があることが最も大切です。保護者様が柔軟な視点を持ち、目の前のお子さまの心に寄り添う姿勢が回復と成長への支えになります。
最後に|母子登校やめたい!限界を感じたらサポートを受ける選択を

母子登校は、一時的にお子さまの安心を支える有効な手段です。しかし、それが長引くにつれ、保護者様の心と身体は疲弊し、親子関係にもさまざまな影響が現れてきます。
「もう限界かも」「母子登校やめたい」そんな思いがよぎるのは、これまでお子さまのために力を尽くしてきた証拠です。
お子さまの母子登校に悩むなか、保護者様はつい自分の気持ちを後回しにして限界を見ないようにしてきたのではないでしょうか。しかし、保護者様が元気で安心して日々を過ごすことこそが、結果としてお子さまの自立と安心につながるのです。
どうか、保護者様が自分の心に寄り添う時間を大切にしてください。
「でも、誰に相談すればいいのかわからない」
「まわりに同じ悩みを持つ人がいない」
「学校の先生や家族には言いづらい」
そんなときは「不登校こころの相談室」のカウンセラーが、あなたの話をじっくりお聞きします。「不登校こころの相談室」は、不登校や母子登校に悩む保護者様やお子さまの「心のケア」に特化したオンラインカウンセリングサービスです。
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