私立中学における不登校の現状

私立中学は、公立中学と比べて不登校の発生率が低いと思われがちですが、決して例外ではありません。

私立中学に通う生徒の中にも、一定数の不登校生徒が存在します。

実際、文部科学省が公表した令和5年度の調査結果によると、私立中学における不登校の生徒は8,120人存在することが明らかとなっています。

私立中学には、学力の高さや独自の教育方針、校則の厳しさなど、学校ごとの個性があります。

魅力的に思える一方で、自由度の高さが合わなかったり、期待とのギャップに戸惑ったりする生徒も少なくありません。

こうしたギャップが、登校への意欲を下げるきっかけになることもあります。

また、私立中学では中高一貫教育が多いため、「中学で不登校になっても高校には進めるのか」という不安もつきまとうケースが多く見られます。

保護者様にとっては、対応を誤ればお子さまの将来に影響が出るのではないかという心配が尽きないことでしょう。

（参考：文部科学省　令和５年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について）

私立中学で不登校が起こる原因

私立中学で不登校になる背景には、いくつかの原因があります。

私立中学では、公立中学とは異なる学習環境や人間関係の中で、お子さまが強いストレスを感じてしまうことが少なくありません。

ここでは私立中学で不登校が起こる、代表的な3つの原因について詳しく見ていきましょう。

入学後の環境変化によるストレス

私立中学に入学すると、これまでとは大きく異なる生活環境や校風に適応しなければなりません。

校区の小学校からそのまま進学する公立中学とは違い、初対面の同級生の多さが繊細なお子さまにとっては大きな負担になることがあります。

実際に、入学当初は緊張感が続き、慣れない学校生活の中で少しずつ心が疲れてしまうケースは珍しくありません。

期待に胸をふくらませて入学したはずが、現実とのギャップに戸惑い、「通いたくない」という気持ちが強まってしまうのです。

こうしたストレスに気づかずにいると、次第に体調不良や無気力といったサインがあらわれることもあります。

入学後しばらくの時期は、お子さまの様子を注意深く見守り、早めに変化に気づくことが重要です。

人間関係のトラブルやいじめ

私立中学は、さまざまな地域から生徒が集まることが多いため、価値観や家庭環境の違いが人間関係の摩擦を生むことがあります。

新しい友人関係を築くなかで孤立したり、仲間外れにされたりすることは、心に大きな傷を残します。

近年では、一見すると目立ったトラブルがないように見えても、SNSでのやり取りや無視といった、外からは分かりにくいいじめも目立ちます。

こうした問題は、本人がなかなか口に出せないため、保護者様や先生が気づきにくいという難しさがあります。

不登校の背景に人間関係の問題がある場合は、まずお子さまの気持ちに寄り添い、安心できる居場所を確保することが大切です。

学習面のプレッシャー

私立中学では、独自のカリキュラムや高度な授業内容に取り組む学校が多くあります。

中高一貫教育の場合は、先取り学習が進んでいたり、宿題や課題の量が多かったりすることも珍しくありません。

そのため、入学前のイメージと現実とのギャップに戸惑い、学習についていけないと感じたときに「自分はダメだ」と思い込んでしまうお子さまもいます。

特に、真面目でがんばり屋なお子さまほど、自分を責めて心が折れてしまうリスクが高くなってしまうのです。

学習の遅れが気になり始めると、登校への不安も強くなってしまうでしょう。

私立中学の不登校で生じやすい悩み

私立中学に在籍中に不登校の状態が続くと、学習面だけでなく心身の健康や家庭の雰囲気にも影響を与えてしまうことがあります。

私立中学ならでは環境が、悩みをさらに複雑にしてしまうケースもあるのです。

ここでは、私立中学のお子さまと保護者様が直面しやすい、不登校の悩みについて整理します。

学業の遅れや進級への不安

長期間学校に通えない状態が続くと、学習内容に追いつけないのではという不安が高まります。

特に私立中学では、独自の進度やカリキュラムが採用されている場合が多く、他の学校との学習内容のズレが、復帰後の壁になりやすいのです。

また、学年末の成績や出席日数によっては、進級や内部進学の可否に関わることもあり、保護者様としても心配が尽きないことでしょう。

学校によっては、個別対応をしてくれるケースもあるため、早めに学校側と相談しておくことが安心につながります。

心身の健康状態の悪化

私立中学での不登校が長引くと、お子さまの気持ちが塞ぎ込みやすくなり、抑うつ的な状態や体調不良が見られることがあります。

朝になるとお腹が痛くなる、頭痛がするといった身体的な症状は、心の不調のサインであることも多いため、注意が必要です。

私立中学の場合、登校のハードルを高く感じてしまいやすく、プレッシャーから心身のバランスを崩すお子さまもいます。

病院で、主に思春期のお子さまに見られることがある「起立性調節障害」などと診断されることもあり、保護者様も戸惑ってしまうことでしょう。

気になる症状がある場合は、学校だけでなく医療機関とも連携しながら対応を考えていくことが必要です。

家庭内のストレスや親子関係の変化

お子さまの不登校は、家庭全体の雰囲気にも影響を与えるものです。

保護者様が不安や焦りを抱える中で、つい厳しく接してしまったり、逆に過度に干渉したりすることで、親子関係にすれ違いが生じてしまうこともあります。

私立中学の場合、進学にかけた期待や学費の負担がある分、「どうして通えないのか」と感情的になってしまうこともあるかもしれませんね。

そういった感情が湧いてしまうのは、自然なことです。

しかし大切なのは、保護者様自身が一人で抱えこまず、外部の支援や相談窓口を頼ることです。

家庭がお子さまの安心の土台となるためにも、家庭内の雰囲気をやわらかく保てるよう意識しましょう。

私立中学で不登校になったときの対応

私立中学に通うお子さまが不登校になったときの保護者様の対応は、その後の状態の安定や回復に大きく関わります。

ここでは、私立中学ならではの環境を踏まえつつ、家庭と学校ができる対応について解説します。

無理に登校を促さない

不登校の初期段階では、登校させようと周囲が無理に声をかけてしまうことがあるかもしれません。

しかし、心身に負荷がかかっているお子さまにとっては、登校を強く勧めることがかえってプレッシャーになり、状況を悪化させる原因にもなります。

まずは「休んでも大丈夫だよ」と安心できる言葉をかけることが大切です。

保護者様がお子さまの気持ちを否定せず受け入れる姿勢が、心の安定に繋がります。

生活リズムを維持する

登校していない期間でも、起床や食事の時間など、生活のリズムを保つことが大切です。

不登校になると、つい生活リズムが乱れがちですが、昼夜逆転の状態が続くと心身の不調を助長し、学校復帰のハードルがさらに高くなることがあります。

登校の代わりに、午前中に散歩をする、決まった時間に課題に取り組むなど、無理のない範囲で日中の活動を取り入れるとよいでしょう。

保護者様が一緒に取り組む姿勢も、お子さまの安心につながります。

学校と連携する

私立中学では、公立中学と比べて比較的柔軟で手厚いサポート体制を整えている学校も少なくありません。

お子さまが不登校の状態にあるときは、保護者様が担任やスクールカウンセラーとこまめに連絡を取り合い、状況を丁寧に共有することが大切です。

たとえば、保健室や別室での登校、オンラインでの授業参加、課題提出による学習評価など、学校によって対応できる内容はさまざまです。

出席扱いとなる特例措置が認められるケースもあり、制度の有無や条件を確認する必要があります。

また、保護者様が一方的に学校側へ要望を伝えるのではなく、あくまで「お子さまにとって何が一番よいか」を共通のゴールとして共有し、協力しながら対応を検討していく姿勢が求められます。

学校と信頼関係を築きながら継続的に連携を図ることで、より柔軟な支援を受けやすくなるでしょう。

別室登校や相談室の利用を検討する

在籍中の学校には「教室以外の場所で過ごす」という選択肢がある場合もあります。

たとえば、保健室登校や別室登校などが挙げられます。

これらは、学校にいることに少しずつ慣れていくためのステップとして有効です。

私立中学でも、こうした柔軟な対応をとっているところは少なくありません。

一気に登校再開を目指すのではなく、安心できる空間で少しずつ学校との関わりを増やしていくことからはじめると、心理的な負担を減らすことができるでしょう。

カウンセリングや外部支援を活用する

お子さま自身が気持ちを整理したり、不安を言葉にしたりすることが難しい場合には、カウンセリングの活用が効果的です。

学校内のスクールカウンセラーに加えて、民間の心理相談やオンラインカウンセリングを利用することで、外部からの支援を受けやすくなります。

また、保護者様自身が「どのように接するべきか分からない」と感じたときにも、相談機関のサポートが心の負担を軽くする手助けとなります。

支援を受けることは「弱さ」ではなく、「お子さまと一緒に乗り越えていくための前向きな行動」です。

たとえば「不登校こころの相談室」では、自宅にいながらオンラインで気軽に相談ができ、状況に応じた丁寧なサポートを受けることが可能です。

家庭だけで抱えこまず、信頼できる相談機関の力を借りる選択肢も、ぜひ視野に入れてみてくださいね。

なお、不登校のお子さまへの対応については、次の記事でも詳しく解説しています。保護者様のケアについても紹介しているので、あわせてご覧ください。

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私立中学で不登校になったときの進路や選択肢

私立中学で不登校の状態が続いた場合、「今後どうなるのだろう」「このまま在籍し続けるべきか」と不安になる保護者様もいることでしょう。

ここでは、不登校のお子さまに合った進路やサポートの選択肢について紹介します。

公立中学への転校

不登校が長引き、私立中学に通い続けることが難しいと感じるときは、公立中学へ転校するという選択肢があります。

公立中学への転校は、地域の教育委員会を通して手続きを進めることができます。

私立中学の校風や学習環境が合わなかった場合、より自由な雰囲気の公立中学で落ち着いて過ごせることもあります。

ただし、地域の公立中学に転校することで起こる、小学校の同級生との再会に気まずさを感じるお子さまもいるため、注意深く見守る必要があります。

また、タイミングや学年によっては受け入れの可否や手続きの詳細が異なるため、早めの相談が必要です。

フリースクールや教育支援センターの利用

学校に戻るのが難しいと感じているお子さまにとって、フリースクールや教育支援センターは新たな学びの場となります。

これらの機関では、個別のペースで学習を進められるほか、少人数制の環境で人との関わりを再構築することが可能です。

不登校のお子さまへの対応に熟知しているため、お子さまも保護者様も安心して過ごすことができるでしょう。

自治体が設置する「適応指導教室」や「教育支援センター」は、在籍校との連携が密であるため、利用が出席扱いとされる場合が一般的です。

社会とのつながりを保ちながら出席日数が確保できるのは、将来的な復学や進学を見据える上でも安心材料となるでしょう。

民間のフリースクールは、学習以外にも独自の活動が展開されていることが多く、お子さまが楽しんで利用できるかもしれません。

ただし、利用が出席扱いとなるかどうかは学校や自治体の判断に委ねられるため、事前に確認しておく必要があります。

学びの継続とお子さまの安心感を両立させるためにも、複数の選択肢を比較・検討していきましょう。

通信制・オンライン学習の活用

現在は、通信制の中学校やオンライン学習サービスを利用して、自宅にいながら学習を継続できる環境が整ってきています。

定期的なレポート提出や動画授業などを通じて、学力の維持や習得を目指すことができます。

特に、ITに慣れているお子さまにとっては、対面よりもオンラインのほうがストレスを感じにくく、集中して取り組めることもあります。

私立中学からの転校を考えず、補助的な学習手段として取り入れる選択も可能です。

私立中学の不登校に関するよくある質問（Q&A）

私立中学で不登校になった場合、保護者様が特に気になるのは、学費や進級、今後の学校生活に関することではないでしょうか。

ここでは、そういった私立中学の不登校に関する疑問にお応えします。

不登校期間中の学費はどうなる？

不登校でも在籍している限り、基本的に学費は発生します。

授業の出席状況にかかわらず、施設利用料や教材費などを含めた全額が請求されることが多く、休学制度が整っていない学校では軽減措置が適用されないケースもあります。

ただし、学校によっては事情を考慮し、一部の費用を減額・免除する場合や、休学扱いに変更できることもあります。

まずは学校に相談してみましょう。

進級や内部進学はできる？

出席日数や成績によっては、進級や高校への内部進学に影響が出る可能性があります。

特に、私立中高一貫校の場合、中学の成績が高校の進学判定に直接関わることもあるため、注意が必要です。

しかし、個別対応を行っている私立中学では、レポート提出や補習などによって進級基準を柔軟に設定しているケースもあります。

実際の扱いは学校ごとに異なるため、早めに学年担当や進路指導の先生と相談できるとよいでしょう。

退学や転校を勧められることはある？

基本的に、学校側が一方的に退学や転校を求めることはありません。

不登校の理由が明確であり、今後の対応について家庭と連携している場合、可能な限り在籍を継続しながら支援策を講じることが一般的です。

ただし、学費の負担や登校再開の見込みの有無など、保護者様自身が転校を選択することもありますよね。

焦らず、お子さまの気持ちと状態を尊重しながら、今後の方針を一緒に考えていくことが大切です。

私立中学で不登校に悩んだときは「不登校こころの相談室」へ

私立中学でお子さまが不登校になると、学費や進路、人間関係など、さまざまな悩みが押し寄せてくることでしょう。

保護者様ご自身も「どう対応すればよいのか分からない」と不安になってしまうのは当然のことです。

そんなときは一人で抱えこまず、専門のカウンセラーに相談してみるのも一つの方法です。

「不登校こころの相談室」では、お子さまの気持ちに寄り添いながら、家庭や学校との関係も含めた幅広い視点でのサポートを行っています。

オンラインで相談できるため、ご家庭にいながら安心して利用できるのも大きな特徴です。

まずは、お子さまと保護者様が少しでも楽になれる方法を、一緒に探してみましょう。