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不登校は解決しなければならない?

「不登校の解決」とは何を指すのでしょう?多くの保護者様は、お子さまの学校復帰を目標にしているかもしれません。しかし、本当に大切なのは、お子さまが安心して過ごせる環境を整え将来へ向けた力を育むことです。
なぜ、保護者様は「不登校を解決しなければ」と考えてしまうのでしょうか。
「不登校を解決しなければ」と思ってしまう理由
不登校が続くと「勉強が遅れるのではないか」「社会に出たときに困るのではないか」といった不安を感じる保護者様は多いもの。周囲の子が普通に学校へ通っている姿を見ると「このままで本当に大丈夫なのかな?」と焦るのは当然かもしれません。
また、学校へ行くのは当たり前といった考えが根強くあると、不登校に対して「すぐにでも解決すべき問題」と捉えてしまうでしょう。そもそも「学校に行くのは当たり前」の考えはどこから生まれるのでしょうか?
それは、保護者様が学校に通うことを「普通」として育ってきた経験や、学歴が将来を左右する社会的な価値観が影響しているのかもしれません。また、「このままずっと不登校が続くと、将来社会に出られなくなるかもしれない…」という漠然とした不安もあるでしょう。
特に、日本は学歴を重視する傾向があるため「進学できなかったら就職に影響するのでは?」と考えてしまう場合もあります。さらに、親族や周囲からの無言のプレッシャーが、保護者様の不安をさらに大きくしてしまうケースもあります。
しかし、学校は義務ではなく「教育を受ける権利」を提供する場です。学校に行かない選択をしたからといって、人生が大きく狂うわけではありません。むしろ、無理に登校を続けると余計に心身に負担がかかり、不登校の期間が長引くケースもあります。
「不登校は悪いこと」と思われてしまう理由
不登校になると「怠けているだけなのでは?」「ただの甘えでは?」と誤解されがちです。特に、日本では「みんなと同じであることが良い」とされる傾向があり、学校に通うのが当たり前の価値観が根強く残っているのではないでしょうか。
そのため「学校に行かない=普通ではない」「何か問題があるのでは?」と捉えられてしまうのです。また、保護者様自身が「自分も子どものころはどんなに嫌でも学校に通っていた」といった経験があると、無意識のうちに「不登校は悪いこと」と考えてしまいます。
しかし、社会の変化とともに教育の選択肢も増えており「学校に行くことだけが正解ではない」という考え方も少しずつ広まっています。
不登校を解決したい親が持つ3つの思い込み

「不登校を解決しなければ」と考える保護者様の多くは、無意識のうちに3つの思い込みを抱えています。これらの思い込みがあると、焦りや不安が強まり、お子さまを精神的に追い詰めてしまいかねません。
不登校の子どもを持つ保護者様には、いったいどのような思い込みがあるのでしょうか。
①学校に行かないと将来が不安
「学校は社会に出るために必要」「学校に行かないと将来困る」といった考えは、多くの保護者様の常識として根付いています。確かに、学校は学力だけでなく、集団行動や社会性を身につける場所でもあります。そのため「社会に適応できなくなる」と不安を感じるのも無理はありません。
しかし、学びの場は学校以外にもあり、社会性を身につける機会もさまざまな形で存在します。社会に出るために大切なのは「自分で考え、選び、行動する力」です。これは、学校に通うだけで身につくものではなく、お子さまが自分なりの方法で学び続けて培われるものでもあります。
最近ではオンライン学習の発展により、不登校でも高卒認定を取得し大学進学や資格取得を目指す方が増えています。また、ITやクリエイティブ業界では、学歴よりもスキルや実績が評価されるケースも珍しくありません。自分の興味を深めることが、そのまま将来の強みになるケースもあります。
②早く学校に戻さなきゃいけない
お子さまが不登校になると「できるだけ早く登校させたい」と焦る保護者様も多いでしょう。しかし「行かせること」が目的になると、お子さまの心に大きな負担がかかります。無理に学校へ戻した結果、登校できるようになったものの、精神的な負担が大きくなり再び不登校になってしまうケースは多いもの。
「学校に行くこと」自体がゴールになってしまうと、お子さまの気持ちは置き去りになってしまいます。不登校の期間は、お子さまにとって「立ち止まる時間」であり「自分の気持ちを整理する時間」でもあります。
登校を急ぐのではなく、お子さまのペースを尊重しながら、どんな環境が最適なのか考える方が解決への近道かもしれません。
③不登校の解決は親の対応次第
「自分の育て方が間違っていたのかも」「自分のせいで学校に行けなくなった」と考え、対応を模索する保護者様は多いのではないでしょうか。しかし「どう接すれば学校に行くようになるのか」という視点にとらわれると、保護者様のプレッシャーが強くなる一方です。
「解決策を見つけなければ」と焦る必要はありません。なぜなら、不登校は「親の努力次第で解決する問題」ではないからです。多くの保護者様は「自分の対応次第でお子さまの不登校を解決できる」と考えてしまいます。それは、これまでの子育てで「親が働きかけで子どもが成長する」といった経験をしてきたからかもしれません。
しかし、不登校は親の働きかけだけで解決するものではなく、お子さま自身が「どうしたいか」に気づく方が何よりも重要なのです。
また、不登校の原因はさまざまで、単純に親の対応だけで改善できるものではありません。むしろ、どうにかして学校に行かせようとするほど、お子さまは「親の期待に応えなければ」と感じ、さらに追い詰められる場合もあります。
親が変えるべきなのは、子どもの行動ではなく子どものありのままを受け入れる姿勢ではないでしょうか。
不登校を解決するために理解しておきたいこと

不登校の解決を考えるうえで、まず大切なのは「なぜお子さまが学校に行けなくなったのか」を理解することです。
不登校になる要因は1つとは限りません。複数の要因が絡み合い、お子さまが学校に行けなくなるケースがほとんどです。ここでは、主な要因とその背景についてお伝えします。
不登校の主な要因とは?
お子さまが不登校になる主な要因として、以下が考えられます。
学校での人間関係 | ・いじめを受けている ・友人関係がうまくいかない ・学校での居場所がない |
学業のプレッシャー | ・授業についていけない ・テストや成績へのプレッシャー・受験への不安 |
家庭環境 | ・親の期待が大き過ぎる ・過干渉・過保護 ・家庭内の不和 |
発達特性 | ・HSP気質 ・発達障害 ・診断はないものの特性がある |
心身の不調 | ・気分の落ち込み、やる気が出ない ・適応障害 ・自律神経の乱れ |
お子さまが学校の話を避けたり、登校前に体調不良を訴えたりする場合、人間関係に悩んでいる可能性があります。また、人一倍敏感な気質や発達障害の傾向がある場合、周囲の刺激やルールに対応するのが難しく、ストレスを抱えやすくなるでしょう。
朝起きられなかったり頭痛や腹痛を頻繁に訴えたりする場合は、心身の疲れが関係しているかもしれません。単なる「怠け」ではなく、身体が学校に行くのを拒否しているサインの可能性があります。
また、不登校の要因は、1つではなく複数の要因が絡み合うケースが多いもの。例えば、学校での人間関係が要因の場合、
- クラスの友達と馴染めず孤立してしまった
- SNSのトラブルで学校が怖くなった
- 授業にも集中できなくなった
といった形で、最初は友達関係の悩みだけだったとしても、その不安から学校に行きづらくなり、やがて学業に影響するなど2次的な要因が生まれるケースもあります。
子どもが言えない本音を理解する
不登校のお子さまの多くは、自分の気持ちをうまく言葉にできません。「学校に行きたくない」とは言えても、その理由を明確に説明するのは難しいケースが多いのです。しかし、お子さまは言葉以外のサインで不安やストレスを表している場合があります。
例えば、以下のような行動が見られる場合は、心の負担が大きくなっている可能性があります。
- 朝になると頭痛や腹痛を訴える
- 学校の話を避ける
- 家でも元気がなく、趣味や遊びにも興味を示さない
- 些細な出来事でイライラするなど、感情の起伏が激しくなる
保護者様は、これらのサインを見逃さずお子さまの心に寄り添う姿勢が大切です。
また、思春期や反抗期にいるお子さまは、保護者様との会話を避ける傾向があります。お子さまの本音を聞き出すには、無理に質問するのではなく「いつでも話を聞くよ」という姿勢が大切です。
不登校を「解決しなければ」を手放して見えてくるもの

不登校が続くと「早く解決しなければ」「どうにかして学校に戻さなければ」と焦る気持ちが強くなる保護者様は多いのではないでしょうか。しかし、不登校の「解決」とは、必ずしも学校復帰を意味するわけではありません。
お子さまにとって、安心できる環境を整え、自分のペースで前に進めることが何よりも大切です。ここでは、学校復帰だけを目標にするのではなく、もっと広い視点を持つにはどうしたらいいかをお伝えします。
「学校に戻ること」だけが解決じゃない
「学校に戻ることが解決」と考えてしまうと、保護者様もお子さまも苦しくなってしまうもの。学校に行かない選択で得られるものもあるので「学校に戻らない=悪いこと」といった固定観念を手放すのも大切です。
保護者様が無理に学校へ戻そうと登校を無理に促すと、お子さまはさらに追い詰められる場合があります。
- 「親の期待に応えなければ」と感じてしまう
- 本当の気持ちを言えなくなってしまう
- ストレスが限界を超え心身の不調が悪化する
学校に通わなくても、成長できる機会はたくさんあります。むしろ、不登校の経験があるからこそ次のような力を身につけられるのではないでしょうか。
- 自分と向き合う時間が増え「どうしたいのか」を考えられる
- 興味や関心に没頭できるので得意分野を伸ばせる
- 自分に合った環境を選ぶ力が育つ
学校復帰を急ぐよりも、お子さまが「安心して過ごせる場所」を見つける方が、長い目で見れば重要です。
親の意識を変えることが解決の近道になる
不登校の解決を考えるうえで大切なのは「お子さまをどう導くか」よりも「保護者様がどのような意識を持つか」です。保護者様が「学校に行くのが当たり前」と思っていると、不登校は「異常な状態」と感じてしまいます。
しかし、お子さまの立場から考えると「学校に行けない」のではなく「行かない選択をしている」のかもしれません。不登校の解決を目指すとき「どうすればお子さまが変わるか」を考えがちです。しかし、実は「お子さまを変えようとしない」姿勢が効果的なアプローチになる場合もあります。
「親としてなんとかしなければならない」と思うのではなく「子どものペースを尊重する」「今は休む時期」と考えれば、お子さまは安心して家で過ごせるようになるでしょう。安心安全の環境を作っていけば、お子さまは自らの力で動き出します。
不登校の子どもに親ができること

不登校のお子さまに対して、保護者様は「何をすればいいのか」「どう関わればいいのか」と悩む場合が多いのではないでしょうか。しかし、大切なのは学校に戻すための対応ではなく、お子さまが安心して過ごせる環境を整えることです。
ここからは、不登校のお子さまに保護者様ができることをお伝えします。
子どもが安心できる家庭環境を整える
不登校のお子さまにとって、家庭が「安心できる場所」であることは非常に大切です。外の世界でストレスを抱えているとき、家の中でも緊張感があると心は休まりません。「家にいても大丈夫」と思える安心感を作るには、保護者様が「今は休む方が大事」という意識を持つことです。
不登校が続くと、どうしても家の中に緊張感が生まれやすくなりるでしょう。「このままでいいの?」といった不安が親の態度に出ると、お子さまは余計にプレッシャーを感じる場合があります。
「家にいるのは悪い」と感じると、お子さまの自己否定は強くなり、さらに気持ちが沈んでしまうでしょう。家庭を安心できる場所にするために、以下のような工夫ができます。
- 学校の話題ばかりしない
- 「今のままでも大丈夫」と安心させる
- お子さまの存在を肯定する言葉をかける
- できないことよりも、できることに目を向ける
- お子さまの好きなものに対して興味を持つ
「自分はこのままでも大丈夫」と思える環境にいると、お子さまは次第に自信を取り戻していきます。
否定せず、話を聞く姿勢を持つ
お子さまが話しかけてきたとき、否定せずに最後まで聞いていますか?話の途中で「でもね」「そうはいっても」と話をさえぎっていませんか?
また「そんなことで?」「みんなも頑張っているよ」など、共感しない姿勢で話を聞いていると、お子さまは「話しても無駄だ」と感じてしまいます。
お子さまが話し始めたら、以下の点を意識して聞いてあげてください。
- 家事や仕事の手を止めてお子さまの目を見て話を聞く
- 話の内容を否定せず共感する姿勢でいる
- 解決策をすぐに提示せず気持ちを受け止める
これらを意識してお子さまの話を聞いてあげると、お子さまは自分で「次にどうするか」を考えはじめます。
子どものペースを尊重して接する
不登校の解決は、決して「学校に戻ること」だけがゴールではありません。お子さまの状況にあわせて、焦らずに対応する姿勢が大切です。
「いつ学校に行くの?」と問い詰めると、お子さまはさらにプレッシャーを感じます。それよりも、不登校の期間はお子さまに必要な休息ととらえて「今できること」を考えると前向きな気持ちになるでしょう。
例えば、お子さまのペースを尊重しながら以下の対応を検討すれば、少しずつ社会と関わる機会は増やしていけます。
- 好きなことや得意なことを伸ばす
- フリースクールや通信教育を検討する
- 地域の活動やオンラインコミュニティに参加する
お子さまが自ら「やってみよう」と思えると、次のステップへ進むきっかけになるでしょう。
親が楽になれば子どもも楽になる

不登校のお子さまに向き合うなかで、保護者様自身が強い不安やプレッシャーを感じるケースは珍しくありません。お子さまをなんとかしなえればと考えるほど、気持ちが焦りお子さまにも伝わってしまいます。
しかし、不登校はすぐに解決できるものではありません。長期的な視点を持ち、保護者様の心に余裕があると、お子さまは安心できます。保護者様が不登校の解決を急がず「今のままで大丈夫」と思えるようになれば、お子さまの心の負担も軽くなっていくでしょう。
ここでは、保護者様の心のケアの大切さと長期化しても焦らない考え方をお伝えします。
親自身の心のケアも大切
不登校の問題は、決して親だけのせいではありません。さまざまな要因が重なって生じるものであり、どんなに愛情を持って育てていても、お子さまが学校に行けなくなるケースはあるのです。
保護者様は必要以上に自分を責めないように、以下の点を意識してください。
「うちの子はうちの子」と割り切る
他人の子と比べても意味がありません。子どもの成長のスピードはそれぞれ違って当然です。お子さまのペースを大切にする方が何よりも重要です。
お子さまの「できていること」に目を向ける
「学校に行けない」状態ばかりを気にしていると気分は落ち込むばかりです。「毎日ちゃんとご飯を食べている」「好きなことに取り組んでいる」など、お子さまが前向きに過ごしている部分を見つけると、気持ちが少し楽になるでしょう。
自分の時間を持つ
不登校の問題にばかり意識が向くと、保護者様の心身が疲弊してしまいます。趣味の時間を確保するなど、意識して気分転換を取り入れてください。
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お子さまの「できていること」に目を向ける
これらを意識して過ごせば、不安や焦りは和らいでいきます。また、1人で悩みを抱え込まないために、カウンセリングを受けるのも効果的です。不登校に関する悩みは、家族だけで抱え込まず専門家や同じ立場の方と共有すれば解決の糸口が見つかるかもしれません。
お子さまの不登校で悩んだとき、相談できる場所には以下があります。
- スクールカウンセラー(学校にいる専門のカウンセラー)
- 教育相談センター(適応指導教室や自治体が運営する相談機関)
- 不登校支援のカウンセリング(民間の心理カウンセラーや専門機関)
- 親の会・不登校支援グループ(同じ悩みを持つ保護者様同士の交流)
話せる場所があると「自分だけじゃない」と思えたり、新しい視点を得られたりする場合があります。
焦らず不登校と向き合うコツ
不登校になると、どうしても「早く学校に戻したい」と焦る気持ちが出てきます。しかし、保護者様の焦りはお子さまに伝わり、余計にプレッシャー与えてしまいかねません。
不登校から抜け出すには、お子さまそれぞれのペースがあります。数週間で学校に戻れる子もいれば、数年かけて徐々に社会とのつながりを取り戻す子もいます。
「今すぐ学校に行けるようになること」よりも、「お子さまが自分の力で未来を切り開けるようになること」を目標にすれば、焦らずに不登校のお子さまと向き合えるのではないでしょうか。
また、「今は休む時期」と考えるのも大切です。不登校は、お子さまが学校を休まなければならないほど心が疲れているサインです。しっかり休んで次のステップに進むためのエネルギーを貯めていると考えれば、保護者様も気持ちが楽になりませんか?
不登校は決して「終わり」ではなく「新しい道を探すための時間」です。この期間をどう過ごすかで、お子さまの未来は大きく変わっていくでしょう。
最後に | 不登校を解決しようと1人で悩まず相談してみませんか?

不登校は決して「悪いこと」ではなく、お子さまが自分のペースで成長するための大切な時間です。しかし、多くの保護者様は「このままで大丈夫なのか」と不安を抱えてしまうの。
この記事では、不登校の「解決」に対する思い込みを手放し、お子さまの気持ちを尊重する大切さをお伝えしました。無理に学校復帰を目指すのではなく、安心できる環境を整えてこそ、お子さまの次の1歩につながります。
親としてできることは、学校に戻すための努力ではなく、お子さまが安心して過ごせる環境を作ること。とはいえ「どう接すればいいのかわからない」「この先どうなるのか不安」といった気持ちが消えないケースもあるかもしれません。そのようなときは、不登校こころの相談室のカウンセラーに相談してみませんか?
また、保護者様の心のケアも重要です。「このままでいいの?」という不安を抱え続けると、知らず知らずのうちにお子さまにもそのプレッシャーが伝わってしまいます。親の心の状態が整っていなければ、不登校のお子さまのサポートはできません。
不登校こころの相談室では、不登校のお子さまを持つ保護者様向けに、オンラインカウンセリングを提供しています。1人で抱え込まず、専門家との会話から新しい視点が得られたり、具体的な対応策が見えてきたりする場合もあります。必要なときには、どうか専門家への相談も検討してください。