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不登校の子にかける言葉が大切な3つの理由

不登校の時期は、お子さまの心はとても傷つきやすくデリケートです。周囲からの何気ない言葉で心に深い傷を負う場合もあれば、たった一言が安心感につながる場合もあります。
特に保護者様の言葉は、お子さまにとってほかの誰よりも大きな影響力を持っているといえるでしょう。
ここでは、不登校のお子さまへの言葉かけがどれほど大きな意味を持つのか、3つの理由から解説します。
①「自己肯定感」を育むから
不登校のお子さまは「まわりの子はできているのに、自分はできない」「こんな自分はダメだ」と、自分を否定してしまうことがあります。
このような自己否定の思考が続くと、失敗を過度に恐れるようになり、新しいことに挑戦できなくなります。そこで大きな力になるのが、保護者様の言葉です。
お子さまが自己否定の思考から抜け出すために、保護者様の言葉や態度はとても大きな支えになるでしょう。まわりと比べない温かい言葉は、お子さまに安心感を与えます。
②「プレッシャー」と「孤独感」を和らげるから
不登校の状態にあるお子さまは、心の中に大きな不安や緊張を抱えていることが少なくありません。「行かなければならないのに行けない」といった気持ちを持ちながら、毎日を過ごしているお子さまも多いでしょう。
また、周囲の視線や言葉に敏感になり「どうせ自分の気持ちは誰にもわかってもらえない」と深い孤独の中にいるかもしれません。このような状況にいると、保護者様の良かれと思った言葉が逆効果になり「責められている」「わかってもらえない」と受け取る可能性も。
だからこそ、無理に励まそうとするのではなく、お子さまの気持ちやペースを尊重する関わりが大切です。
「今のままでも大丈夫」「あなたの気持ちを大事に思っているよ」といった言葉は、お子さまの心の緊張を緩めます。「自分はこのままで大丈夫」と感じられるような関わり方をしていけば、お子さまの心も穏やかに変化していくでしょう。
③「癒し」と「回復力」を引き出す力があるから
言葉は、単なる情報を伝える手段だけではありません。人からかけられる言葉で、心が落ち着いたり癒されたりする大きな力があります。
特に不安やストレスでいっぱいのお子さまは、保護者様からのやさしい語りかけで心が落ち着くこともあるでしょう。それは、頭で理解する前に、体と身体が安心を感じ取るような感覚かもしれません。
信頼できる人からの言葉は、傷ついた心の回復を助けるだけではありません。将来困難にぶつかったとき、再びその言葉が支えになる場合もあります。
不登校の子にかけてほしい言葉

お子さまの心が敏感になっているとき、どんな言葉を選ぶかはとても大切です。なぜなら、声かけの内容によって、お子さまの気持ちが安心するときもあれば、逆に傷ついてしまう場合もあるからです。
不登校のお子さまには「何をいっても届かない」と感じる保護者様は多いかもしれません。しかし、伝わっていないように思えても、その言葉はお子さまの心の深い部分に、ゆっくりと染み込んでいきます。
ここでは、安心感・信頼・感情の受容・前向きな支えにつながる4つの観点から、心に寄り添う言葉をお伝えします。
安心感を与える言葉
学校に行けない日々が続き、自分の存在価値を見失っているお子さまにとって、保護者様からの無条件の愛情を感じられる言葉は大きな支えになります。
たとえば、こんな言葉があります。
- 「どんなあなたでも大切だよ」
- 「学校に行けなくても、あなたの価値は変わらないから」
- 「ゆっくり休もう、今は無理しなくていいからね」
- 「おうちにいていいんだよ」
ただし、これらの言葉をお子さまにかけるときは、表面上のものだけにならないように気をつけてください。言葉ではそう伝えても、保護者様の内面に不安や焦りがあるとお子さまには伝わりません。
信頼を伝える言葉
不登校の状態でも、お子さまの心には「がんばろう」とする気持ちが存在しているものです。保護者様がそれを信じて支え続けていけば、お子さまは前向きに進んでいけるでしょう。
たとえば、次のような言葉があります。
- 「あなたを信じている」
- 「あなたの選んだ道を応援するよ」
- 「いつでもあなたの味方だから」
- 「自分のペースでいいんだよ」
信頼は押しつけではなく、「見守っている」という姿勢が伝わって初めてお子さまの心に届くものです。
感情を受け止める言葉
お子さまが抱えている感情を否定せずにそのまま受けとめることは、安心感を与えるだけではなく親子の信頼関係につながります。
「何があったの?」と問い詰めるよりも、「つらかったね」と共感する言葉の方がお子さまの心には響くでしょう。
感情を受け止める言葉には以下のようなものが挙げられます。
- 「つらかったね」
- 「よくがんばったね」
- 「今まで、苦しかったんだね」
- 「教えてくれてありがとう」
- 「話してくれてうれしいよ」
こうした言葉かけで、お子さまは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じ、少しずつ心を開いていきます。
前向きになれる言葉
お子さまの状態が少し落ち着いてきたときには、未来を意識できるような声かけも効果的です。ただし、急がせたりプレッシャーを与えたりしないよう、慎重に言葉を選ぶ必要があります。
たとえば、以下のような言葉で前向きになれる場合があります。
- 「いつか外に出たくなったら、その時は一緒に考えよう」
- 「あなたの未来には、まだまだいろんな可能性があるよ」
- 「どんな道を選んでも、応援しているからね」
- 「今は休む時間、エネルギーがたまったらまた動き出せるよ」
- 「焦らなくて大丈夫、歩きたいときに歩けばいい」
このような言葉が「急いで先のことを考えてもいいんだ」と思えるきっかけになるかもしれません。
不登校の子がかけて欲しくない言葉

保護者様が不登校のお子さまに声をかける際、励ましたい、元気づけたいといった気持ちで言葉をかけていますよね?
しかし、どんなに良かれと思う言葉であっても、お子さまの心の状態によっては「責められている」と感じてしまう場合があります。
思いがけずお子さまを追い込んでしまわないためにも、どんな言葉がプレッシャーや自己否定につながりやすいのかを、あらかじめ知っておくのも大切です。
- 「学校に行ったほうがいいよ」は逆効果
お子さまが不登校になる背景には、体調不良、いじめ、学習の遅れ、教室の雰囲気、人間関係のストレスなど、さまざまな理由があります。そうした背景があるにもかかわらず「学校に行ったほうがいい」といわれると、お子さまは自分の苦しみは理解されないと感じてしまうでしょう。
- 「みんな頑張っているよ」は比較になりがち
保護者様としては「あなたもできるよ」といった励ましのつもりかもしれません。しかし、お子さまの劣等感が強くなってしまう可能性も。まわりと比較して、自分だけがダメなように思えてしまうと自己肯定感は下がってしまいます。
- 「どうして行けないの?」はプレッシャーに
お子さまも、学校に「なぜ行けないのか」がわからない場合が多いものです。保護者様としては、原因を探したい気持ちになるかもしれませんが、この問いかけは、逆にプレッシャーを与えてしまうでしょう。
ほかにも、「がんばってね」「いつから学校行けそう?」「そろそろ行かないと…」などの言葉は、一見すると応援や励ましのように聞こえるかもしれません。
しかし、心のエネルギーが下がっているお子さまにとっては「もっとがんばりなさい」「今のままではダメ」というメッセージになってしまいます。
不登校のお子さまにかける言葉に正解はありません。大切なのは、伝える側の意図ではなく「どう受け取られるか」という視点です。
不登校の子への言葉かけ以外で大切なこと

言葉はとても大きな力を持っています。しかし、不登校のお子さまに対しては、声かけだけで心が安定することはありません。
お子さまが少しずつ安心と自信を取り戻していくには、言葉だけではなく保護者様の関わり方そのものが重要なのです。
ここでは、お子さまへの「言葉かけ」以外に保護者様が意識したい大切な関わり方についてお伝えします。
子どもの話を「聴く」姿勢
不登校のお子さまにとって、自分の気持ちを言葉にするのはとても勇気がいることです。だからこそ、保護者様には「否定せず、話をさえぎらず、最後まで聴く」姿勢が大切なのではないでしょうか。
お子さまの話を聞いている途中で、意見やアドバイスをつい伝えたくなってしまうかもしれません。しかし、まずはお子さまが何を感じ、何に悩んでいるのかに耳を傾ける姿勢がなによりも大切です。
言葉よりも「安心して話せる空気感」が、お子さまの心を少しずつ開いていきます。
安心できる「居場所」を作る
不登校のお子さまは、学校に行けない自分を責めたり、社会とのつながりが断たれ孤独を感じている場合があります。
そんな状況にいるお子さまの心の回復に欠かせないのが、安心できる居場所です。たとえば、家庭を安心安全の場所にするには、以下のような小さなやりとりの積み重ねも大切。
- 一緒にご飯を食べる
- 好きなテレビ番組を一緒に観る
- 「おはよう」「おやすみ」の声かけをする
また、お子さまの興味や関心事を尊重する姿勢も忘れないでください。ゲームやマンガなども、不登校のお子さまにとっては必要な「心の避難場所」かもしれません。
そこに対して否定的にならず、関心を寄せる姿勢が親子関係を深めるきっかけになるでしょう。
親自身の心のケアも忘れずに
お子さまの不登校は、保護者様にも大きなストレスや不安を与えてしまいます。「自分の育て方が悪かったのでは?」と、自分を責めてしまう方もいるでしょう。しかし、不登校は決して保護者様だけのせいではありません。
保護者様の心身が疲れ切ってしまうと、お子さまを支える余裕もなくなってしまいます。不登校のお子さまを支えるには、まず保護者様が安心して頼れる場所を持つことも検討してください。
- 不登校支援のカウンセラーに相談する
- 同じ経験を持つ保護者様が集まる「親の会」などに参加する
- 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう
保護者様の心が整い穏やかでいることが、お子さまへの安心感につながります。
不登校の子にかける言葉以外にも、保護者様ができるいくつかの対応があります。それらの対応については、こちらの記事を参考にしてください。
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最後に | 不登校の子にかける言葉に悩んだら「不登校こころの相談室」へ

どんなにお子さまを大切に思っていても、言葉がうまく出てこなかったり「これでよかったのかな」と不安になったりする日もあるかもしれません。
しかし、お子さまは、保護者様のまなざしや声から、寄り添おうとする気持ちをしっかり感じ取っています。
思い通りに言葉が出てこなくても、完璧な対応ができなくても、「あなたの味方だよ」という気持ちこそがお子さまの支えになります。
悩みが尽きない日々が続けば、保護者様の心身は疲弊してしまいます。そんなときは、どうか無理せず、がんばってきた自分を労ってください。そして、1人で抱えきれないときは誰かに頼ってみませんか?
「不登校こころの相談室」では、専門のカウンセラーがお子さまのこれからについて一緒に考えていきます。言葉のかけ方や普段のかかわり方だけでなく、保護者様の気持ちにも丁寧に寄り添いながらサポートします。
オンラインだからこそ、時間や場所にとらわれず、いつもの環境でリラックスしての相談が可能です。悩んだときには「不登校こころの相談室」に、ぜひご相談ください。