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不登校の原因に母親の特徴は関係するのか?

「不登校は母親のせい」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?しかし、不登校になる原因はお子さま一人ひとりによって異なります。
ここでは、母親の特徴と不登校の関係について解説します。自分を責めすぎないためにも、ぜひ最後まで読んでください。
母親だけが原因ではない
まずお伝えしたいのは、不登校の原因は母親だけにあるわけではないということです。不登校の原因は非常に複合的で、1つの要因だけで起こるケースはほとんどありません。
学校での人間関係、勉強への不安、お子さまの特性、社会的な要因など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。母親の関わり方も、その多くの要因の1つとして関係する場合もあります。
しかし、「母親の育て方が悪かったから不登校になった」という単純な因果関係ではありません。なぜなら、同じような育て方をしても、不登校にならないお子さまもたくさんいるからです。どんなに理想的な育て方をしていても、お子さまが不登校になる可能性はあります。決して母親の関わり方だけで不登校になるかどうかが決まるわけではありません。
なぜ母親との関係が注目されるのか
それでも「不登校の原因は母親」といわれるのは、多くの家庭では母親が主たる養育者であるからと考えられます。育児の主な担い手が母親である家庭は多く、お子さまと過ごす時間が長い分、お子さまへの影響も大きいでしょう。
また、心理学や発達心理学の研究において、母親との愛着形成がお子さまの成長に重要な役割を果たすと示されています。こうした研究結果も「母親の影響は大きい」という認識につながっているのかもしれません。
しかし、「影響が大きい」と「不登校になった責任がある」は別のものです。母親の関わりがお子さまに影響を与えるのは事実です。しかし、それは父親も、学校の先生も同じではないでしょうか。母親だけに責任を押し付ける社会のあり方こそ、見直されるべきかもしれません。
不登校になったのは親である自分のせいだと責めてしまう気持ちについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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不登校の原因といわれる母親の特徴とは?

ここでは、一般的に不登校と関連があると指摘される母親の特徴を紹介します。ただし、これらの特徴があるからといって、お子さまが「不登校になる」わけではありません。むしろ、お子さまへの愛情があるからこその行動がほとんどでしょう。
過干渉な関わりをする
過干渉とは、お子さまのすべてを管理しようとする関わり方です。お子さまの問題を代わりに解決してしまう、選択を与えず親の考えを押し付けるといった行動が当てはまります。
たとえば、お子さまが何を着るか、誰と遊ぶか、どの習い事をするかなど、すべてを保護者様が決めていませんか?間違った道を歩んでほしくないといった思いからの行動で、悪意があるわけではないでしょう。
しかし、長期的に過干渉が続くと、お子さまは自分で決める経験が少なくなります。自分で判断する力、問題を解決する力が育ちにくくなる可能性があります。
完璧主義である
完璧主義の母親は、「〜すべき」「〜ねばならない」の考え方が多い傾向です。お子さまに対しても自分に対しても、小さな失敗も許せず常に完璧を求めてしまいます。
これは、お子さまにより良い人生を送ってほしいという願いから生まれる考え方かもしれません。しかし、完璧を求められ続けると、お子さまは失敗を極度に恐れてしまうでしょう。また、完璧でない自分を認められず、自己肯定感が低下する可能性もあります。
過度に心配する
過度な心配性の母親は、常にお子さまを心配しています。「学校で友達とうまくやっているだろうか?」「勉強についていけているだろうか?」と、ネガティブな想像ばかりする傾向があります。
お子さまが少し元気がないだけで「何かあったの?」と何度も確認する。お子さまが新しいことに挑戦しようとすると「危ないからやめなさい」と止めてしまう。こうした行動が過度な心配にあてはまります。
感情的になりやすい
感情的になりやすい母親は、気分の浮き沈みが激しかったり、イライラをお子さまにぶつけてしまったりします。母親の機嫌が良いときは許されるのに、機嫌が悪いときは怒られる。こうした状況では、お子さまは常に母親の顔色を見るようになります。
しかし、これは母親自身も疲れているサインです。育児、家事、仕事と、母親は多くの役割を担っています。疲れていれば、誰でも感情的になる場合はあります。
他者との比較癖がある
「お友達はできているのに」「お兄ちゃんはこうだったのに」と、成績、運動能力、性格など、あらゆる面でお子さまを誰かと比べていませんか?
友達との比較、兄弟間での比較は、お子さま自身を見ているのではなく、常に「誰かより上か下か」という基準で判断していることになります。比較の対象よりお子さまが優れていると安心し、劣っていると不安になる。しかし、これではお子さまの個性や努力そのものを認めていることにはなりません。
常に他人と比較されると、お子さまは「誰かより優れていなければ価値がない」と思い込み、自己肯定感が低下します。
お子さまへの期待が大きい
お子さまへの期待が大きい母親は、「〇〇大学に入ってほしい」「〇〇みたいになってほしい」と、将来に対して具体的なビジョンを持っています。時には自分ができなかったことをお子さまに託してしまう場合もあるでしょう。
親なら誰でも、お子さまの幸せを願うものです。しかし、期待が大きすぎると、お子さまは「親の期待に応えなければ」とプレッシャーを感じます。親の期待と自分の意思のギャップに苦しんでいるかもしれません。
なぜ母親の特徴が不登校の原因といわれるのか?

前述した母親の特徴が、必ずしも不登校を引き起こすわけではありません。同じような特徴を持つ母親でも、お子さまが元気に学校に通っている家庭はたくさんあります。
しかし、これらの特徴が長期的に続くと、お子さまの成長や心の発達に影響を与える可能性があるのも事実です。ここでは、なぜこれらの特徴が不登校と関連するといわれるのかを解説します。
お子さまの自己肯定感への影響
母親の言動の多くは、お子さまの自己肯定感に影響を与えます。自己肯定感とは、「自分は自分のままでいい」「自分には価値がある」と思える感覚のことです。
完璧主義の母親に育てられたお子さまは、常に高い基準を求められます。100点以外は認められない、失敗は許されない環境では、「完璧でない自分はダメだ」といった思い込みが強くなるでしょう。また、他者と比較される環境で育ったお子さまは、誰かより優れていなければ価値がないという思考パターンに陥ってしまいます。
過干渉や過度な心配も、お子さまの自己肯定感に影響します。親が先回りして問題を解決してしまうと、お子さまは「親が何でもしてくれるから自分は何もしなくていい」と捉えるようになるでしょう。
自己肯定感が低いお子さまは、学校生活でも大きな影響を受けます。新しいことに挑戦する勇気が持てず、失敗を極度に恐れてしまいます。友達の何気ない言葉に深く傷ついたり、自分の意見を言えなかったり。こうした状態が続くと学校そのものが苦痛な場所になってしまうのです。
また、小さな失敗や挫折を乗り越える力も弱くなっていきます。例えば、テストで悪い点を取ってしまった、友達とちょっとしたトラブルがあったなど、本来なら乗り越えられるような出来事でも深刻に受け止めてしまいます。
自立心・主体性の発達への影響
母親の特徴は、お子さまの自立心や主体性の発達にも影響を与えます。過干渉な関わりが続くと、お子さまは自分で決める経験がほとんどありません。何を着るか、誰と遊ぶかなど日常の小さな選択まで親が決めてしまえば、お子さまは「自分で決める」練習ができないのです。
過干渉の環境で育つと、「困ったら誰かが何とかしてくれる」といった考えが当たり前になります。それでは自分で問題を解決しようとする気持ちは育ちません。
完璧主義や大きな期待も、主体性の発達を妨げます。親の期待に応えるのが目標になってしまうと、「自分が本当にやりたいこと」を考える機会がなくなります。
主体性がないまま成長すると、「なぜ学校に行くのか?」といった問いに答えられません。「親が行けと言うから」「行くのが当たり前だから」以外の理由を持てないのです。その理由が崩れたとき、学校に行く意味を見出せなくなってしまいます。
不登校のお子さまがいる母親が今からできること

では、不登校のお子さまがいる母親にできることは一体なんでしょう?不登校になった原因を追求しようと過去を責めても仕方ありません。大切なのは「今から何ができるか」の視点を持つことです。
ここからは、不登校のお子さまに母親ができることをお伝えします。
お子さまの意思を尊重する
まず大切なのは、お子さまの意思を尊重する姿勢です。親がすべてを決めるのではなく、お子さまに選ばせる機会を増やしていきましょう。
具体的には、「どうしたい?」「どう思う?」とお子さまに聞く習慣をつけることです。最初は「わからない」「どうでもいい」という返事が返ってくるかもしれません。それでも焦らず、少しずつお子さまが自分で決める機会を持たせてあげましょう。
また、お子さまが決めたことを否定しないのも大切です。「それよりこっちの方がいいんじゃない?」と口を出したくなるかもしれません。しかし、お子さまが自分で決めて、その結果を経験することこそが何よりも重要です。
お子さまが選んだ結果、うまくいかない場合もあるでしょう。しかし、失敗から学ぶケースは多いものです。先回りして失敗を防ぐのではなく、失敗しても大丈夫だと伝えることが大切です。
完璧主義を手放す
「〜すべき」「〜ねばならない」の考え方を、「〜したい」「〜できたらいいな」に変えていきませんか?誰でも失敗するし、うまくいかない日もあります。
お子さまに対しても、完璧を求めないようにしましょう。テストで100点を取らなくても、部屋が散らかっていても、忘れ物をしても、それでお子さまの価値が下がるわけではありません。小さな失敗は許すようにしてみましょう。完璧でない自分を許すことが、完璧でないお子さまを許すことにつながります。
また、保護者様自身にも優しくしてください。夕食を作る気力がなければ、惣菜や外食に頼ってもいいのです。「完璧な母親でなければ」というプレッシャーを手放していくと、お子さまの完璧主義も和らいでいくでしょう。
感情をコントロールする
イライラや怒りを感じること自体は悪いものではありません。ただ、その感情をお子さまにぶつけてはいけません。
怒りを感じたら、言葉を発する前に深呼吸してみたりその場を離れたりするのも効果的です。物理的に距離を取れば、感情が落ち着く場合もあります。もし、感情的に怒ってしまったら、後から素直に謝りましょう。
人間は感情を持つ生き物です。その感情が整理できない場合は、カウンセリングを受けたり専門家から感情との付き合い方を学んでみてはどうでしょうか。何よりも母親の心の安定が、不登校のお子さまを支えることにつながります。
感情的になりやすい状態を作っている要因は、睡眠不足、疲労、ストレスなどが関係しています。それらの要因を取り除くことも、感情のコントロールにつながります。
肯定的な言葉がけを増やす
お子さまへの言葉がけも、意識的に肯定的なものに変えていきませんか?否定的な言葉を減らし、肯定的な言葉を増やすだけで自己肯定感は育てられます。お子さまが何かしてくれたときは、それを当たり前だと思わず「ありがとう」と感謝の言葉も伝えるようにしてください。
また、結果ではなく過程を認める姿勢も忘れないでください。努力や過程を認めるとお子さまは失敗を恐れずに挑戦できるようになります。
不登校のお子さまに対する接し方や対応については、こちらの記事でよりくわしく解説しています。ぜひ、参考にしてください。
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周囲と協力する
不登校のお子さまを支えるのは、母親一人の仕事ではありません。配偶者、祖父母、学校の先生、カウンセラーなど、周囲と協力するのも大切です。
不登校への対応について、夫婦で考え方や対応が違っても、まずはお互いの意見を聞き合うことが重要です。学校との連携も忘れないでください。担任の先生、スクールカウンセラー、保健室の先生など、学校には相談できる人がいます。定期的に連絡を取り、お子さまの状況を共有しましょう。
不登校のお子さまがいる母親は、一人で悩みを抱え込まないことが大切です。
自分を大切にする
そして最も大切なのは、母親が自分を大切にすることです。自分を犠牲にしてお子さまに尽くすのが良い母親ではありません。母親が心身ともに健康でいることが、お子さまを支える力になります。
不登校のお子さまが気になって眠れない日もあれば、疲れて家事をこなす気力も湧いてこない日もあるでしょう。そんなときは「母親だから〜しなければ」といった思い込みを手放してください。料理を作らなくても、部屋が散らかっていても、それで母親失格にはなりません。
自分を大切にするのと、お子さまを大切にするのは同じです。自分を大切にできる母親だからこそ、お子さまも大切にできるのです。
お子さまの不登校で心身ともに疲れている保護者様は、こちらの記事も併せてお読みください。
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不登校の原因は母親だと責めないために知っておきたいこと

不登校の原因は、母親だけにあるのではありません。ですから、「自分が悪かった」と落ち込む必要もないのです。ここでは、不登校のお子さまがいる母親が、自分を責めすぎないために知っておいてほしいことをお伝えします。
不登校の原因は複合的
何度も述べてきた通り、お子さまの不登校は母親だけの責任ではありません。学校での人間関係、勉強への不安、お子さまの特性、社会的要因など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
母親の関わり方も1つの要因として関係するケースはあります。しかし、それだけが原因ではないのです。同じような育て方をしても不登校にならない子もいれば、理想的な育て方をしていても不登校になる場合もあります。
不登校は、誰か一人の責任ではなく、さまざまな要因が重なった結果といえるでしょう。「誰が悪いか」ではなく、「今から何ができるか」を考えてください。過去を責めるより、未来を変えることに目を向けましょう。
完璧な母親などいない
この世界に、完璧な母親などいません。誰もが試行錯誤し、失敗しながら子育てしているものです。過干渉になるのも、完璧を求めるのも、感情的になるのも、それはお子さまへの愛情があるからなのです。
また、母親も一人の人間です。疲れてイライラし、感情をコントロールできない日もあるでしょう。間違えたら謝ればいいのです。お子さまは、完璧な母親ではなく、あなたという母親を必要としているのですから。
気づいたことが素晴らしい
多くの人は、自分の問題に気づくことすらできません。しかし、お子さまが不登校になって「自分にも改善できることがあるかもしれない」と考える方もいるでしょう。
不登校になってつらいのは、お子さまだけではありません。母親も同じように苦しんでいます。そんな状況でも、お子さまのために何かできることはないかと考えているその姿勢こそが素晴らしいのではないでしょうか。どうか気づいて前に進もうとしている自分を労ってあげてください。
最後に | 「不登校こころの相談室」ができること

お子さまの不登校は母親の関わり方が1つの要因として関連する場合があります。しかし、決して母親だけが原因ではありません。
過干渉、完璧主義、過度な心配、感情的な対応、他者との比較、大きな期待など、これらの母親の特徴は、お子さまの自己肯定感や自立心に影響を与える可能性があります。だからといって「悪い母親」を意味するものではありません。これらの多くはお子さまへの愛情から生まれる行動といえるでしょう。
しかし、お子さまが不登校になって「具体的に何をすればいいの?」「自分の関わり方のどこに問題があるの?」と悩む保護者様は多いものです。また、一人で改善に取り組むのは、孤独で不安かもしれません。
「不登校こころの相談室」では、オンラインで全国どこからでも相談できる環境を整えています。「不登校こころの相談室」のAI無料診断では、簡単な質問に答えるだけで母親の関わり方の特徴や改善ポイントが見えてきます。
この診断をもとに、お子さまとご家庭の状況に合った経験豊富なカウンセラーの紹介も可能です。母親が一人で悩みや不安を抱え込む必要はありません。専門家と一緒に、お子さまを支える方法を考えていきませんか?
また、母親自身のメンタルヘルスのサポートも行っています。不登校のお子さまを支えるには、母親の心身が健康であることが何より大切です。どうか、自分のケアも忘れないでください。「不登校こころの相談室」は、母親もお子さまも、そして家族全体をサポートします。安心してご相談ください。
















