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「HSPは不登校になりやすい」という思い込みについて

「HSPの子どもは学校に適応できずに不登校になりやすい」といった情報を目にしたことはありませんか?このような印象が広まっている背景には、HSPの特性に対する誤解や偏った情報があります。
HSPは確かに繊細で感受性が豊かな気質を持っています。しかし、それが直接的に不登校につながるわけではありません。ここでは、なぜ「HSPは不登校になりやすい」という思い込みが生まれるのかお伝えします。
教育現場での理解不足
HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉は、ここ数年でかなり浸透してきた印象があります。しかし、繊細さを「弱い」と捉えられたり、HSPは「病気」と思われていたりする誤解はまだ根強いかもしれません。
たとえば、HSPの子どもが大きな音に驚いて教室から出てしまったとき、適切な理解がなければ「わがまま」や「問題行動」として捉えられてしまいます。また、集団活動で疲れやすいHSPの子どもに対して「もっと積極的に参加するように」と求めるとかえってストレスを増大させることになりかねません。
教育現場で、HSPの子どもに対する理解が浅いと、HSPは学校に向いていないといった印象を生み出してしまいます。しかし、適切な配慮と理解があれば、HSPの子どもも十分に学校生活を楽しめるのです。
マイナス面に注目する風潮
HSPに関する情報の多くは、困りごとや対処法に焦点を当てたものが目立ちます。「音に敏感で疲れやすい」「人混みが苦手」「傷つきやすい」といったマイナス面ばかりが強調されがちです。
こうした情報が、保護者様に「うちの子も学校で大変な思いをするのでは?」と不安を感じさせてしまうのかもしれません。また、お子さま自身も「自分はほかの子と違う」と思い込んでしまう可能性があります。
実際には、HSPの特性には以下のような素晴らしい長所がたくさんあります。
- 深く考える力
- 豊かな創造性
- 他者への思いやり
- 細やかな気づき
これらは、学校生活で大いに活かせる能力ばかりだと思いませんか?しかし、こうしたポジティブな面があまり語られないために、HSPは困難を抱えやすいといった印象が定着してしまったと考えられます。
HSPでも不登校にならないのはどうして?

「HSPは不登校になりやすい」といった思い込みがある一方で、実際にはHSPでありながら学校生活を充実させている子どももいます。クラスメートや先生から愛され、勉強や活動に積極的に取り組んでいる子どもたちもたくさんいるのです。
それでは、HSPの子どもたちが学校でうまく過ごせるのは、どんなときなのでしょうか?ここでは、HSPの特性が学校生活でどのようにプラスに働くか、そしてその力を発揮するためにどんな環境が必要なのかをお伝えします。
学習面
HSPの子どもは、学習面において優れた能力を発揮するケースが多くあります。その最大の特徴は、物事を深く考え抜く力です。表面的な理解で満足せず、「なぜそうなるのか?」「どういう意味があるのか?」までを追求する姿勢は学力向上につながるでしょう。
たとえば、国語の授業では登場人物の心情を深く読み取り、豊かな感受性を活かした感想文や作文を書くことができます。理科の観察学習では、ほかの子が見落としがちな細かな変化にも気づき、詳細で正確な記録を残すでしょう。また、社会科では歴史上の人物の気持ちに共感し、出来事の背景まで理解しようとする姿勢が評価されます。
集中力の高さも、HSPの学習面での大きな強みです。興味を持った分野に対しては、長時間集中して取り組み、周囲が驚くような深い知識や技能を身につける子どももいます。このような特性は、特に専門性の高い学習や創作活動において大いに発揮されるのではないでしょうか。
人間関係
HSPの子どもは、学習面以外にも素晴らしい特徴があります。その1つが、他者への深い共感力と思いやりの心です。クラスメートが困っているときや悲しんでいるとき、HSPの子どもは敏感にその変化を察知します。けがをした友達の手当てを手伝うなどの優しさが行動に表れることもあるでしょう。
争いを好まない性格は、調和を大切にするため、まわりの雰囲気が穏やかで温かくなります。また、HSPの子どもは先生との関係においても信頼を築きやすい傾向があります。集中力を発揮して授業に真剣に取り組む姿勢や、任された役割は責任を持って果たそうとする姿が細やかな気遣いなどが先生に伝わり、高く評価される場面も多いでしょう。
学校側の配慮
HSPの子どもが不登校にならないようにするには、学校側の理解と適切な配慮も重要です。HSPの特性を理解している先生がいる学校では、HSPの子どもが問題なく学校生活が送れるように工夫されています。
たとえば、音に敏感なHSPの子どもに対しては、座席を騒音の少ない場所に配置したり、大きな音を出す活動の前には事前に知らせたりといった配慮があります。また、人前で発表することに緊張しやすい場合は、少人数のグループ発表から始めたり、準備時間を十分に与えたりするなどの工夫があるでしょう。
係の活動や当番では、HSPの子どものポジティブな面を活かせる役割を任せて、自信を育てます。植物の世話、図書の整理、掲示物の作成など、細やかな作業を必要とする活動は、HSPの子どもが力を発揮できる絶好の機会となるでしょう。
大切なのは、HSPの特性を「個性」として受け入れ、その子なりのペースを尊重してくれる先生の存在かもしれません。理解ある環境に身を置くことができれば、HSPの子どもは安心して自分らしさを発揮し、学校生活を楽しめるでしょう。
HSPと不登校の関係性や具体的な支援方法について、より詳しい情報はこちらの記事で解説しています。
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HSP特有の繊細さを強みに変える3つの方法

HSPのお子さまが楽しく学校生活を送るためには、繊細さを「困りごと」ではなく「才能」として見つめ直すことが大切です。保護者様や先生など、周囲の大人がその特性を肯定的に理解し、支えていく必要があります。
また、HSPならではの感受性や観察力を活かせる場面が見つかると、お子さまの自信や自己肯定感が育まれます。ただし、HSPの子どもは刺激に敏感なため、疲れやすさへの配慮は欠かせません。
ここからは、繊細さを強みに変える3つの方法をお伝えします。
①特性を肯定する
HSPの特性を強みに変える第1歩は、保護者様をはじめとするまわりの大人がお子さまの特性を心から肯定することです。「音に敏感」ではなく「音楽的才能がある」、「人見知り」ではなく「慎重で思慮深い」というように、ポジティブな表現で特性を捉え直してみませんか?
日常の声かけでも、このような視点を大切にしてください。お子さまが友達の気持ちに気づいて優しい行動を取ったときは「優しい心を持っているね」と具体的に褒めてあげましょう。また、集中して取り組んでいる姿を見たときは、その作品に取り組む過程を認める声かけが大切です。
学校でも、担任の先生にHSPの特性について理解してもらい、お子さまの良い面を認めてもらえるよう伝えておくものいいでしょう。「繊細で、細かい部分によく気がつきます」「思いやりが深く、困っている人を放っておけません」といったように、良い面を具体的に伝えると、先生もお子さまの個性について理解し心に留めておくことができます。
HSCの基本的な特性や4つの特徴「DOES」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
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②得意分野を探す
HSPの子どもには、その特性を活かせる得意分野が必ずあります。保護者様は、お子さまの興味や関心をよく観察し、才能が開花しそうな分野を一緒に探してあげるといいでしょう。
芸術分野では、HSPの豊かな感受性が大いに発揮されるケースがあります。絵画や工作では、細部まで丁寧に仕上げる集中力と美的感覚が活かされるでしょう。音楽では、微細な音の違いを聞き分ける能力や、楽曲に込められた感情を深く理解する力が才能として現れるかもしれません。
言語の分野でも、HSPの子どもは優れた能力を示す場合が多くあります。登場人物の心情を深く読み取ったり、作者の意図を敏感に感じ取ったりする力は、読解力や表現力の向上につながるでしょう。
自然観察や生き物の世話なども、HSPの子どもが力を発揮しやすい分野です。小さな変化に気づく観察力や、生き物への深い愛情は、理科学習や環境活動での活躍につながります。
③疲れやすさをケアする
HSPの子どもは刺激に敏感なため、疲れやすい傾向があります。この特性を理解し、適切なケアで持続的に力を発揮できる環境を整えていくのも大切です。
学校から帰ったら、十分な休息時間を確保してあげましょう。好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、静かな環境でゆっくりと過ごせる時間が学校で受けた刺激をリセットします。
睡眠も重要です。HSPの子どもは、その日の出来事を振り返って深く考える傾向があるため、就寝前には心を落ち着かせる時間を設けましょう。リラックスできるルーティンを作ることで、質の良い睡眠につながります。
学校生活のけるお子さまの様子を観察し、疲れがたまりそうなときは早めに休息を取れるようにしてあげてください。特に、大きな行事や新しい環境での活動の前後は注意深くケアする必要があります。
担任の先生にも、お子さまの疲れやすさについて理解してもらい、必要に応じて配慮をお願いするといいでしょう。
最後に|HSPの子どもが不登校にならないために

「HSPの子どもは不登校になりやすい」──そんなイメージを持っていませんか?しかし実際には、HSPの子どもたちが持つ繊細さや思いやりは、学校生活のなかで大きな力になる場合も少なくありません。
大切なのは、HSPの特性をネガティブに捉えるのではなく、その子らしさとして受け止め、得意を伸ばしていくことです。HSPの特性を深く理解して適切にサポートすれば、HSPのお子さまは学校でも安心して自分らしく輝いていけるはずです。
とはいえ、わが子がHSPかどうか、どうサポートすればいいのか保護者様だけで判断するのは難しい場合もあるでしょう。たとえHSPの知識があっても「どう向き合えばいいの?」と迷われる方もいるかもしれません。
そんなときは「不登校こころの相談室」の無料AI診断を試してみませんか?いくつかの質問に答えるだけで、その診断結果からお子さまに合ったサポートの方法性が見えてきます。
また、「不登校こころの相談室」で受けられるオンラインカウンセリングでは、お子さまの可能性を一緒に見つけ出しながら、保護者様の不安も少しずつ和らげていけるようサポートしています。