目次
高校生の引きこもりとは?

高校生の引きこもりは、単なる怠けや甘えではなく、心の中に負担を抱えている場合がほとんどです。
まずは、引きこもりの概念や不登校との違い、そして近年の傾向について解説します。
引きこもりと不登校の違い
引きこもりと不登校は似ているようで、実際には異なる特徴を持っています。
文部科学省は、不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないまたは登校したくともできない状況にあり、年間30日以上欠席しているもの。ただし、病気や経済的な理由によるものを除く」と定義しています。
つまり、不登校は「学校に行かない」ことが主な特徴です。
一方、引きこもりは「社会との接触を断つ」という側面が強く、家庭内での孤立も含まれる傾向にあります。
不登校のお子さまが、時間の経過とともに社会的な孤立感を深め、引きこもり状態に移行することもあります。
学校だけでなく家庭内でも人との関わりを避けるようになると、引きこもり傾向が強まっているサインかもしれません。
出典:文部科学省 不登校の現状に関する認識
高校生の引きこもりが増えている理由
近年、高校生世代の引きこもりは増加傾向にあります。
背景には、学業や進路へのプレッシャー、友人関係の複雑化、SNSなどのデジタル社会がもたらすストレスなど、さまざまな要素が関係しています。
文部科学省が発表した調査結果によると、高校生の不登校者数は約6万9千人に達しており、過去最多を更新しています。
不登校状態が長期化すると、社会からの孤立感が強まり、引きこもりに至るケースも少なくありません。
また、自己肯定感の低下や、将来への漠然とした不安感も引きこもりの増加に影響しています。
「努力しても報われないのではないか」「自分には何もできないのではないか」と感じる体験が重なることで、外の世界に踏み出す意欲が低下してしまうのです。
高校生という多感な時期だからこそ、心の変化に気づき、周囲が早めに支援の手を差し伸べることが大切です。
出典:文部科学省 令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
高校生の引きこもりが起こる原因

高校生のお子さまが引きこもり状態になる背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
学校生活、家庭環境、心の健康状態など、いずれか単独ではなく、複数の要素が重なって影響を及ぼしていることが少なくありません。
ここでは、引きこもりにつながりやすい代表的な原因を3つ取り上げ、解説します。
学校生活のストレス・悩み
高校生活は、お子さまにとって時間、存在ともに大きな比重を占めるものです。
学業のプレッシャー、部活動の負担や友人関係のトラブルなど、日常の中で積み重なるストレスは、想像以上に大きなものになりがちです。
たとえば、成績不振によって自信を失ったり、友人グループからの孤立感を覚えたりすると、学校に通うこと自体が精神的な負担になってしまいます。
また、クラス替えや進路選択などで環境の変化に適応しきれず、強い不安を抱えるケースもあります。
こうしたストレスをひとりで抱え込むことが続くと、やがて学校から距離を置き、引きこもりへとつながるリスクが高まります。
保護者様が日頃からお子さまの小さな変化に気づき、早めに声をかけることが引きこもりの予防につながります。
家庭環境や親子関係の影響
家庭環境や親子関係も、高校生の引きこもりに大きく関わっています。
家庭はお子さまにとって最も安心できる場であるべきですが、その家庭内で緊張やプレッシャーを感じると、心の逃げ場を失うことになりかねません。
たとえば、保護者様の過干渉や過度な期待、反対に無関心な態度などが、お子さまの自己肯定感を著しく低下させることがあります。
また、家庭内での頻繁な喧嘩や離婚問題、経済的不安なども、知らず知らずのうちにお子さまに影響を与える要因となります。
親子関係が緊張したままでは、お子さまは学校や社会で受けたストレスを家庭で癒すことができません。結果的に、引きこもり傾向が強まる恐れがあるのです。
保護者様自身がまず安心できる家庭環境を整えることが、引きこもり予防への大きな一歩となるでしょう。
心の不調
心の健康状態の悪化も、引きこもりに直結する重要な要素です。
うつ症状、不安障害、発達特性による対人関係の難しさなど、精神的なトラブルを抱えるお子さまは少なくありません。
また、自己肯定感が極端に低くなったり、「どうせ自分なんて」といった無力感にとらわれることも、外の世界に踏み出す意欲を奪うことにつながります。
これらの心の不調は、見た目には分かりづらいため、周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解されがちです。
しかし本人にとっては、学校に行くことや外出することが極めて大きな負担になっているのです。
お子さまの変化に気づいたときは頭ごなしに叱るのではなく、まずは心の状態に目を向け、必要に応じて専門機関への相談を検討しましょう。
高校生の引きこもりがもたらす影響とリスク

高校生のお子さまの引きこもり状態が続くと、心身だけでなく、将来にもさまざまな影響が及ぶ可能性があります。
短期的な問題だけにとどまらず、長期的な視点からもリスクを見据えた対応が必要です。
ここでは、引きこもりによって生じやすい影響について想定し、解説します。
学力や進路への影響
引きこもりが続くと、学校への出席日数や学業成績に影響が出ることが多くなります。
高校は、義務教育ではありません。
そのため、単位を取得できないことで進級や卒業が難しくなったり、進学に必要な条件を満たせなくなるケースも珍しくありません。
単位取得が危ぶまれると、学習への意欲そのものが低下してしまうこともあり、「どうせ頑張っても無理だ」という諦めの感情が芽生えることもあります。
また、進学や就職など、将来に向けた選択肢が引きこもりによって狭まってしまうことも想定されます。
自己肯定感がさらに低下する悪循環に陥ることもあるため、早めにサポートを検討することが大切です。
高校生の引きこもりに悩んだ際は、状況に応じて通信制高校といった柔軟な学びの場を検討することも、一つの選択肢となります。
社会性や自立への影響
引きこもりによって人との関わりを避ける生活が長引くと、対人スキルや社会性を育む機会が失われてしまいます。
社会生活に必要なマナーやルール、コミュニケーションの感覚は、実際の経験を通じて身についていくものです。
しかし、引きこもりの状態が続くと、これらのスキルを伸ばすチャンスが減り、将来的に学校生活や職場での適応に苦労することが懸念されます。
また、自立に向けた生活スキル、時間管理や金銭管理なども身につきにくくなります。
高校生のお子さまの引きこもりでは、家族が支えながら少しずつ社会との接点を取り戻していくことがポイントとなります。
心身の健康へのリスク
引きこもり生活は、心身両面にわたる健康リスクを高める恐れがあります。
昼夜逆転や運動不足による体力低下、栄養バランスの乱れなど、身体面の問題が現れやすくなるほか、孤独感や無力感によって精神的にも不安定になりがちです。
憂うつな気分や強い不安を抱えたまま過ごす時間が長くなると、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症するリスクも高まります。
心身の健康を守るためにも、生活リズムの改善や適度な運動、人との交流の機会づくりを意識していくことが重要です。
高校生の引きこもりに家族ができる対応

引きこもりに悩むお子さまを支えるためには、家族の関わり方が非常に大切です。
間違った対応は、状況をさらに悪化させてしまうこともあります。
焦らず、そしてお子さまの心に寄り添いながら、適切なサポートをしていきましょう。
ここでは、保護者様が心がけたい、具体的な対応策を整理していきます。
否定せず受け止める
引きこもり状態にあるお子さまに対しては、まず「否定しない」ことが何よりも大切です。
行動だけを見て「甘えだ」「怠けている」と責めてしまうと、本人はさらに心を閉ざし、自信を失ってしまいます。
本当は、外に出られないことに本人自身も苦しみを抱えていることが多いのです。
「今はつらいんだね」「無理に頑張らなくていいよ」という受け止め方を示すことで、お子さまは安心感を得ることができます。
存在そのものを肯定し、ありのままのお子さまを受け入れる姿勢が、回復につながるでしょう。
焦らず見守る
引きこもりからの回復には、時間がかかることが一般的です。
家族が焦る気持ちは当然ですが、「早く元に戻ってほしい」というプレッシャーは、かえって逆効果になりかねません。
食事を一緒にとれた、少し会話ができたといった小さな変化を温かく見守り、焦らず待つ姿勢が大切です。
変化のスピードは人それぞれです。
お子さまのペースを尊重しながら、必要なときにそっと寄り添う存在でいることが、回復を支える力になります。
家庭環境・生活リズムを整える
家庭の雰囲気や生活リズムも、引きこもりからの回復には大きく影響します。
過干渉になりすぎず、かといって無関心にもならない、ちょうどよい距離感を意識することが大切です。
また、生活リズムが乱れがちになる引きこもりの状態では、昼夜逆転の是正や、適度な活動量を意識した生活づくりが必要です。
強制ではなく自然な形で朝の光を浴びたり、散歩に誘ったりするなど、小さなアプローチを積み重ねるとよいでしょう。
家庭が安心できる場所であり続けることが、お子さまの社会復帰への土台となります。
さまざまな進路を検討する
引きこもり状態が続く場合、無理に全日制高校への復帰を目指すよりも、引きこもりや不登校への理解がある進学先を選択する方が適しているケースもあります。
たとえば、通信制高校やフリースクールなどが挙げられます。
これらの学校では、自分のペースで学べるカリキュラムが用意されており、登校頻度を調整できるケースもあります。
「一度道を外れたら終わり」ではなく、「別の道もある」と伝えることが、お子さまに新たな希望を持たせるきっかけになるでしょう。
進路について話すときは押し付けではなく、本人の気持ちを尊重する姿勢を忘れないことが大切です。
家族のメンタルケアも大切にする
高校生のお子さまが引きこもりになると、支える家族も大きなストレスを抱えることがあります。
「親なのだから頑張らなければ」と自分を追い込んでしまうと、心身のバランスを崩しかねません。
家族が疲弊してしまうと、結果的にお子さまを支える力も失われてしまいます。
必要であれば、家族自身もカウンセリングを利用したり、相談機関に頼ったりして、気持ちを整理する時間を持つことがおすすめです。
家族が元気でいることは、お子さまにとっても大きな支えとなるでしょう。
高校生の引きこもりの相談先

お子さまの引きこもりに直面したとき、家族だけで抱え込まず、外部の支援を受けることも大切な選択肢です。
専門機関や相談窓口を上手に活用することで、回復への道筋が見えやすくなる場合もあります。
ここでは、相談できる場所について具体的に紹介します。
学校
在籍している高校にも、相談できる窓口は存在します。
担任の先生やスクールカウンセラー、養護教諭などに相談することで、学校生活における配慮や支援策を検討できることがあります。
たとえば、登校へのハードルを下げるための個別対応や、進級・卒業に向けた柔軟な支援策を提案してもらえることもあります。
また、学校側と家庭が連携することで、お子さまへのサポート体制を強化できる点もメリットの一つです。
まずは、無理なく相談できる相手を学校内で探してみるのもよいでしょう。
医療機関
心の不調や体調面に不安がある場合は、医療機関への相談が有効です。
精神科や心療内科、小児科の専門医に相談することで、適切な診断や支援が受けられる可能性があります。
必要に応じて、カウンセリングや薬物療法といった治療的サポートが提供されることもあります。
また、発達特性などが背景にある場合、専門機関でのアセスメント(評価)を受けることで、本人に合った支援方法を見つけやすくなります。
体と心の両面から、お子さまの状態を丁寧に見ていくことが大切です。
オンラインカウンセリング
最近では、対面にこだわらない支援方法として、オンラインカウンセリングを利用する方も増えています。
自宅で利用できるため、外出が難しいお子さまや、対面での相談に抵抗を感じる場合にも利用しやすいというメリットがあります。
「不登校こころの相談室」もその一つです。
オンラインカウンセリングを通して、本人が自分の気持ちを整理したり、小さな目標に向かって前進するきっかけをつかむことを目指していきます。
また、保護者様が子育てや対応について相談することも可能です。
高校生のお子さまの引きこもりに悩んだ際は、状況に合わせて柔軟なサポートを活用していきましょう。
高校生の引きこもりに悩んだときは「不登校こころの相談室」へ

高校生のお子さまが引きこもりになる背景には、学校生活でのつまずきや家庭環境、心の不調など、さまざまな事情が重なっています。
お子さま自身も苦しんでいる場合が多く、保護者様もどのように関わればよいか悩むことがあるでしょう。
焦らず、お子さまのペースに合わせてサポートを続けることが大切です。
もし、家族だけで支えることに不安を感じた場合、外部の力を借りるのも一つの選択肢です。
「不登校こころの相談室」では、引きこもりや不登校に悩むご家庭を対象に、オンラインでのカウンセリング支援を行っています。
カウンセリングは、不登校・引きこもり支援の経験が豊富な臨床心理士や公認心理師が担当します。
家庭内だけで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。