目次
母子分離不安とは?
母子分離不安とは、お子さまが保護者様(または主な養育者)から離れることに対して過剰な不安や恐怖を感じる状態を指します。
特に、お母様と離れることに不安を抱くお子さまが多いとされています。
お子さまは成長の過程では、保護者様との愛着関係を築き、そこから自立していくことを学ぶことが一般的です。
しかし、何らかの要因でこの自立の過程がスムーズに進まない場合、保護者様と離れることに強い不安を感じてしまうことがあります。
これは、発達段階において自然な現象ではありますが、日常生活に支障をきたすほど強い場合は、適切な対応が必要となります。
特に、小学生のお子さまは学校入学時に母子分離不安を経験することがあるでしょう。
保護者様に付き添われず登下校することや、長時間座って勉強することなど、お子さまにとっては初めての経験ばかりです。
担任の先生にもまだ懐いていない段階では、より一層不安を感じやすくなります。
誰よりも安心できる相手である保護者様から離れられず、登校を拒否するケースもあるのです。
小学生に見られる母子分離不安のサイン
小学生に母子分離不安が起こるとき、いくつかのサインが見られることがあります。
低学年のお子さまの場合、不安をうまく言葉にすることが難しいため、行動に表れることもあります。
ここでは、小学生のお子さまに見られる母子分離不安のサインを、4つ紹介します。
- 登校を嫌がる
- 体調不良を訴える
- 保護者が離れると泣く
- 一人で寝られない
登校を嫌がる
登校を嫌がるのは、小学生のお子さまに見られる母子分離不安の代表的なサインの一つです。
小学校は家庭環境とは異なる集団生活の場であり、保護者様と離れて過ごす時間も長くなります。
そのため、保護者様と離れることへの不安が強いお子さまは、学校に行くこと自体を強く拒否する傾向があります。
たとえば、朝になると「お腹が痛い」と体調不良を訴えたり、泣きながら保護者様にしがみついて離れなかったりすることがあります。
また、「友達がいない」「先生が怖い」など、理由をつけて登校を拒否する場合もありますが、その根底には保護者様と離れることへの不安が隠されていることがあります。
特に理由もなく繰り返し登校を拒否する場合は、母子分離不安の可能性を念頭に置き、対応を検討する必要があるでしょう。
体調不良を訴える
前項でも少し触れたように、母子分離不安によって体調不良を訴えることもあります。
ストレスは、心だけでなく身体にも不調として表れることがあります。
特に、保護者様と離れることへの不安が強いお子さまは、実際に体調不良を感じていなくても、腹痛や頭痛、吐き気などを訴えることがあるのです。
例えば、登校前になると必ず「お腹が痛い」と言って学校を休みたがったり、登校できても保健室に頻繁に行くようになったりするケースがあります。
登校前といった特定の場面で体調不良を訴える場合、母子分離不安の可能性を考慮しましょう。
保護者が離れると泣く
母子分離不安のお子さまは、保護者様が離れると泣くことがあります。
保護者様は、お子さまにとって最も身近で安心できる存在です。
そのため、保護者様が視界から消えたり物理的に離れたりすることに対して、強い不安や恐怖を感じ、泣いてしまうことがあります。
特に小さなお子さまの場合、言葉にして不安を表せないために、泣くという方法で訴えている可能性もあります。
これは、乳幼児期のお子さまであれば自然なことであり、健全な愛着関係を築けている証とも言えます。
しかし、本来は成長とともに自信をつけ、乗り越えていくものです。小学生の頃までこの不安が続くのであれば、何らかの対応が必要でしょう。
一人で寝られない
小学生のお子さまに母子分離不安が起きている場合、夜に一人で寝られないことがあります。
お子さま一人での就寝は、しなければならないものではありませんが、お子さまにとって自立の第一歩とも言えるものです。
まだ小さなお子さまが無理に一人で寝る必要はありませんが、成長とともに「一人で寝てみたい」という思いが出たり、実際にチャレンジしたりすることは心の成長を後押しするものです。
できたときの達成感は、お子さまの自信にもつながるでしょう。
しかし、保護者様と離れることへの不安が強いお子さまは、一人で寝ることに強い抵抗を示し、いつまでも保護者様と寝たがったり、夜中に何度も起きて保護者様のところへ行ったりすることがあります。
このように、年齢が上がっても一人で寝ることを極端に嫌がる場合は、母子分離不安が影響している可能性があります。
小学生の母子分離不安の原因
小学生のお子さまの母子分離不安は、何が原因となって起こるのでしょうか。
保護者様は「育て方のせいでは」と自分を責めることがあるかもしれませんが、決してそうとは限りません。
ここでは、小学生のお子さまの母子分離不安の原因を、4つにまとめて紹介します。
- 家庭環境の影響
- 学校や友人関係の影響
- 子どもの性格
- 発達障害
家庭環境の影響
家庭環境はお子さまの心の発達に大きな影響を与え、母子分離不安の一因となることがあります。
家庭はお子さまにとって最初の社会であり、安心できる基盤となる場所です。
しかし、家庭環境が不安定であったり愛情不足を感じたりする場合、お子さまが不安を感じやすくなり、保護者様に依存してしまうことがあります。
たとえば、両親の不仲や引越しによる環境の変化、きょうだいの誕生などは、お子さまに不安や緊張感を与えるものです。
もちろん、家庭の事情として自然であり致し方ない出来事もありますが、お子さまにとっては不安要素であることを心に留めておけるとよいですね。
学校や友人関係の影響
学校や友人関係もお子さまの心に大きな影響を与え、母子分離不安を引き起こす原因となります。
小学校に入学すると、お子さまは初めて家庭とは異なる集団生活を送ることになります。
新しい環境への適応や友人関係の構築など、お子さまにとっては楽しくもありストレスにもなる出来事ばかりです。
これらの変化への適応がうまくいかない場合、お子さまは不安を感じ、保護者様への依存心を強めることがあります。
たとえば、学校でいじめを受けていたり友達となじめなかったりする場合、お子さまは孤独を感じ、学校に行くことを嫌がるようになります。
結果、保護者様と離れることへの不安が増幅される可能性があります。
学校生活や友人関係が良好であることは、お子さまの心の安定にとって非常に重要であり、母子分離不安を予防する上でも大切な要素となるのです。
子どもの性格
母子分離不安は、お子さまの性格が原因となって起こることがあります。
お子さまは生まれながらにさまざまな性格や気質を持っており、環境への適応力やストレスへの耐性も異なります。
加えて、成長する中での経験や保護者様との関わりも性格形成に影響します。
内向的で繊細な性格のお子さまは環境の変化に敏感で、保護者様と離れることに対して人一倍強い不安を感じやすい傾向があります。
人見知りが激しかったり新しい環境に慣れるのに時間がかかったり、些細なことでも深く考え込んだりする性格のお子さまは、小学校のような保護者様と離れる状況に強い不安を感じやすいのです。
お子さまの生まれ持った性格や過去の経験も母子分離不安の原因となるため、その際はお子さまに合った対応が必要となります。
発達障害
発達障害の特性は、母子分離不安を引き起こしやすくなる傾向にあります。
発達障害にはさまざまな種類がありますが、いずれも感覚過敏、環境の変化への適応の難しさ、コミュニケーションの困難さなどが見られることがあります。
これらの特性は、保護者様と離れることへの不安を引き起こす可能性があるものです。
たとえば自閉スペクトラム症のお子さまは、特定の習慣やルーティンが変化することを極端に嫌う傾向があります。
そのため、毎日一緒にいる保護者様と離れて学校に行くという変化に強い不安を感じることがあります。
また、感覚過敏を持つお子さまは、学校の騒がしい環境に強いストレスを感じ、保護者様という安心できる存在を強く求めることがあります。
発達障害だからといって必ずしも母子分離不安が起こるわけではありません。
しかし、発達障害の特性によって環境の変化や他者とのコミュニケーションに困難を感じやすく、それが保護者様と離れることへの不安に繋がる場合があります。
なお、母子分離不安と発達障害の関係についてはこちらの記事でさらに詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
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小学生の母子分離不安への対応
ここでは、小学生のお子さまに母子分離不安が起きたときの対応について、具体的に解説します。
- 気持ちに寄り添う
- 学校と連携する
- 徐々に離れる練習をする
- 自信を持てるようなサポートをする
- 専門機関に相談する
つらいと感じる場合は家庭内だけで抱え込まず、積極的に相談しましょう。
気持ちに寄り添う
母子分離不安への対応において、お子さまの気持ちに寄り添うことは基本と言えます。
お子さまは不安な気持ちを言葉でうまく表現できないことがあります。
そのため、保護者様は行動や表情から気持ちを察し、言葉で代弁してあげることで、お子さまは安心感を得られます。
たとえば、登校を嫌がるお子さまに対して叱るのではなく「学校に行くのが怖いんだね」「ママと離れるのが寂しいね」と、お子さまの気持ちを言葉にして伝えましょう。
そして「大丈夫だよ」と安心させてあげることが大切です。
お子さまの不安な気持ちを否定せず、受け止めてあげましょう。
学校と連携する
母子分離不安を克服する上では、学校と連携することも大切です。
お子さまは家庭だけでなく、学校でも多くの時間を過ごします。
学校の先生と連携することで、家庭と学校の両方からお子さまをサポートすることが可能になります。
特に、担任の先生にはお子さまの状況を伝えておきましょう。
学校での過ごし方や友達関係、困っていることなどを先生に把握してもらうことで、学校でも適切なサポートを受けられるようになります。
徐々に離れる練習をする
お子さまの自立を促すために、徐々に保護者様と離れる練習をしましょう。
このとき、急に保護者様と長時間離れるとお子さまのストレスとなってしまいます。
少しずつ離れる時間を延ばしていくことで、お子さまは徐々に保護者様がいなくても大丈夫だという自信を持つことができるのです。
たとえば、習い事をさせることで徐々に離れる機会を作るのもよいかもしれません。
お子さまに保護者様がいなくても大丈夫という自信をつけさせてあげることが、母子分離不安の克服につながります。
専門機関に相談する
家庭だけでは対応が難しい場合、専門機関に相談しましょう。
たとえば、児童相談所や児童精神科、カウンセラーなどに相談することで、専門的な視点からお子さまの状況を分析してもらい、適切な対応策を教えてもらうことができます。
必要に応じて、カウンセリングやプレイセラピーなどの心理療法を受けることも有効です。
保護者様だけで悩まず専門機関に相談することで、より適切なサポートが得られ、母子分離不安の早期解決につながることがあります。
小学生の母子分離不安に悩んだときは?
小学生のお子さまの母子分離不安にはさまざまな原因があり、お子さまに合った適切な対応が求められます。
家庭での対応が困難だと感じるときは、相談機関の利用も有効な手段の一つです。
不登校こころの相談室では、お子さまだけでなく、対応に悩む保護者様の相談も受け付けています。
小さなお子さまを連れて病院を受診したり相談したりすることに抵抗がある場合、オンラインで相談できるというのは安心ですよね。
不登校こころの相談室では、最初に無料相談を実施することで保護者様の悩みを丁寧に汲み取ることを心がけています。
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