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母子分離不安とは?

母子分離不安とは、お子さまが保護者様と離れることに強い不安を抱き、登園や登校を拒んでしまう状態のことを指します。
特に幼児期から小学校低学年ごろまでによく見られ、「お母さんと離れたくない」といった気持ちが言動に強く表れることがあります。
こうした反応は、一時的なものとして自然に見られる場合もありますが、長期間にわたって続き、生活に支障をきたすようであれば、注意が必要です。
よくある誤解として、「甘えているだけ」と片づけられてしまうことがありますが、母子分離不安は、どうにもならない強い不安を感じている状態です。
「行けない」ことに目を向けるのではなく、その背景にある不安に気づき、無理のないサポートを行っていくことが大切です。
母子分離不安の原因

母子分離不安には、いくつかの背景要因が重なっていることが多く、単一の原因を特定するのは難しい場合もあります。
ここでは、母子分離不安が起こる代表的な原因を解説します。
環境の変化
母子分離不安が起こる背景として、環境の変化が大きく影響することがあります。
お子さまは、生活の中にある“慣れ”を通して安心を感じています。
そのため、進級や進学、引っ越しやクラス替えなど、日常生活の環境が変わると不安定になりやすくなるのです。
環境の変化そのものを避けることはできませんが、「変わること」がどれほど大きなストレスになるのかを理解しておくことで、保護者様の対応にも余裕が生まれるでしょう。
家庭環境によるもの
家庭内で緊張感が続いていたり、保護者様が日常的に強い不安を抱えていたりすると、お子さまの母子分離不安に影響することもあります。
また、保護者様に過保護・過干渉な傾向がある場合、お子さまが「自分ひとりでは無理、離れられない」と思い込みやすくなるケースもあります。
家庭は、お子さまにとっての安全基地です。その土台が安定していれば、外の世界に出る不安とも少しずつ向き合えるようになります。
母親への愛着の強さ
お子さまがお母様に対して強い愛着を持っている場合、離れる際により一層不安になりやすい傾向があります。
これは、お母様との信頼関係が形成されている証ともいえますが、その分「離れる=不安や危機」と感じやすくなってしまうのです。
常に一緒に行動してきた親子関係が長く続いている場合、分離の場面で混乱やパニックのような状態になることもあるでしょう。
お母様への愛着そのものは、決して悪いものではありません。
大切なのは、その気持ちを受け止めたうえで、少しずつ「離れても大丈夫」という安心感を育てていくことです。
発達特性によるもの
お子さまの発達特性が、母子分離不安の原因となることもあります。
自閉症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの傾向があると、環境の変化への適応が難しかったり、感情の調整が苦手だったりするため、保護者様と離れることが大きな負担になるのです。
発達特性があるからといって一概に問題視する必要はありませんが、お子さまの感じ方や特性に合った支援を意識することで、母子分離不安を和らげるヒントが見えてくるかもしれません。
なお、こちらの記事では、母子分離不安と発達障害の関係性について詳しく解説しています。具体的な対処法についても紹介しているので、あわせてご覧ください。
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母子分離不安にカウンセリングが有効な理由

母子分離不安への対応に悩んだとき、家庭だけで抱え込むのではなく、専門家のサポートを受けることはとても有効です。
ここでは、カウンセリングがどのように役立つのか、その具体的な理由を4つ解説します。
話すことでストレスを減らすことができる
カウンセリングの大きな役割の一つは、気持ちを言葉にする場を持てることです。
保護者様自身が「誰かに聞いてもらえる」と感じられることで、心理的なストレスが和らいでいきます。
母子分離不安への対応は、先の見えない不安と向き合うことでもあり、保護者様にとっても大きな負担になります。
そのようなとき、カウンセリングで感じている気持ちを話すだけでも、状況を客観的に整理しやすくなるでしょう。
保護者自身が安心できる
母子分離不安に悩むお子さまを支える保護者様の負担は大きく、常に冷静に対応できるわけではありませんよね。
ときには、「自分の育て方が悪かったのかもしれない」といった自己否定の感情に苦しんでしまうこともあるかもしれません。
カウンセリングでは、そうした保護者様の気持ちにも丁寧に寄り添ってくれます。
お子さまの不安に対応するためには、まずは保護者様の心が安定していることがとても重要です。
自分を責める気持ちから少し距離を取り、安心して関われる状態を作るためにも、カウンセリングは大きな支えになります。
子どもの気持ちを理解する手がかりになる
母子分離不安が起こるお子さまの中には、自分の気持ちをうまく言葉にできないケースもあります。
周囲の大人がその本音に気づけず、対応に戸惑ってしまうことは珍しくありません。
そのようなとき、カウンセラーとのやりとりを通じて、「なぜそうした反応をするのか」「本当は何を求めているのか」といった見立てや気づきを得られることがあります。
たとえば、保護者様が「行きたくないというのは単なる甘えだと思っていたけれど、本当は不安を伝える手段だったのかもしれない」と気づいたことで、関わり方が変わることもあります。
理解が深まれば、その分だけ親子の関係も変化していくでしょう。
専門的なアドバイスが得られる
母子分離不安に直面すると、細かな悩みが次々と出てきますよね。
そうした場面で、カウンセラーから専門的な視点でアドバイスがもらえることは、大きな安心につながります。
たとえば登校時の声かけの工夫や、無理をさせずに少しずつ慣らしていく方法など、実践的なヒントが得られると、すぐに行動へつなげやすくなります。
その場での不安を軽減するだけでなく、今後に向けた見通しを持てることが、保護者様にとって大きな支えとなるでしょう。
母子分離不安に対するカウンセリングの進め方

カウンセリングを受けてみようと思っても、「どう進めていけばいいのか分からない」と感じる方は多いかもしれません。
ここでは、母子分離不安に関するカウンセリングの進め方について、3つのステップに分けて紹介します。
①相談先を選ぶ
カウンセリングを始めるにあたって大切なのは、信頼できる相談先を見つけることです。
誰に相談するかによって、その後の安心感やサポートの質も大きく変わっていきます。
母子分離不安に関する相談先は、スクールカウンセラーや、臨床心理士や公認心理師のいるカウンセリングルーム、児童発達支援センター、自治体の相談窓口などがあります。
また、最近ではオンラインカウンセリングも広まり、自宅から気軽に相談できる選択肢も増えています。
②カウンセリングを申し込む
相談先が決まったら、実際に申し込みの手続きを行います。
不安に思う方も多いですが、母子分離不安に関する相談は決して特別なことではありません。
初回相談では、今の状況や困りごとを話すことから始まります。お子さまと一緒に参加する場合もあれば、まずは保護者様だけが相談する形もあります。
オンライン相談であれば、外出の手間もなく、時間も柔軟に調整しやすいため、子育て中の保護者様にとって利用しやすい方法でしょう。
③相談のペースを決める
カウンセリングは一度きりで終わるのではなく、継続的に行うことで少しずつ変化を促していくものです。
そのため、自分たちの生活リズムに合った無理のないペースで続けていくことが大切です。
一般的には、週に1回、50分程度のカウンセリングが推奨されています。
このようなとき、オンラインカウンセリングであれば、継続しやすい環境を整えることができます。
焦らず、お子さまと保護者様の気持ちのタイミングに合わせて、無理なく進めることが何よりも大切です。
母子分離不安の相談は「不登校こころの相談室」へ

母子分離不安は、単なる甘えや育て方の問題ではありません。
お子さまが抱える不安に丁寧に向き合うことは、今後の安心や自立につながる大切なプロセスです。
「不登校こころの相談室」では、保護者様だけの相談も可能です。
オンライン形式のため、忙しい日々の中でも自分のペースでご利用いただけます。
悩みを言葉にすることで、きっと気持ちが整理されていきます。
保護者様だけで抱えこまず、ぜひご相談ください。