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不登校の7つの段階
不登校は、単に学校に行きたくない「わがまま」や「怠け」ではなく、お子さまの心身に起こる複雑な要因が絡み合っています。適切に対応するためには、不登校のプロセスを7つの段階に分けて考え、それぞれの状況を理解する必要があるでしょう。
ここでは、不登校の7つの段階の特徴と状態について詳しく解説します。
第1段階:不登校の予兆期
お子さまが不登校になる前には、必ずといっていいほど「予兆」があるものです。この時期は、お子さまからの小さなSOSのサインが見え始める段階といえるでしょう。
生活面における変化
- 「あと5分…」が増え、なかなか布団から出られなくなる
- 夜更かしが増え、昼夜逆転の傾向が出てくる
- 「お腹が痛い」「頭が痛い」など、身体の不調を訴える頻度が増える
学校に関する変化
- 「学校に行きたくない」とはいわないものの、行きたくない様子である
- 宿題やテストへの強い不安や拒否感が見られる
- 「先生が怖い」「クラスメイトと話すのが怖い」といった発言がある
心理面での変化
- イライラしやすくなり、些細な出来事で感情的になる
- 趣味や好きなことへの興味が薄れていく
- 家族との会話が減少する
この段階では、まずはお子さまの様子を観察し、気持ちに寄り添った接し方を心がけましょう。「わがまま」「怠けている」といった否定的な判断は避け、「つらかったね」といった共感の言葉でお子さまの気持ちに寄り添うといいかもしれません。
お子さまが話したいタイミングを待つと同時に、安心して話せる環境づくりが大切です。
第2段階:不登校開始期
学校への抵抗感が具体的な形で現れ始める段階です。この時期、お子さまは学校に行くことに対して強い不安や恐れを抱き始め、それが行動として表れてきます。
生活面における変化
- 朝になると体調不良を訴え、特に頭痛や腹痛、吐き気などの症状が増える
- 朝の準備に極端に時間がかかるようになる
- 食欲不振や不眠など、生活リズムの乱れが顕著になってくる
学校に関する変化
- 「学校に行きたくない」などの言葉を明確に口にするようになる
- 遅刻や早退、休む日が増える
- 学校行事や集団活動への参加を避けるようになる
心理面での変化
- 不安や緊張が強くなり、学校の話題を避けるようになる
- 「みんなに迷惑をかけている」といった罪悪感を持ち始める
- 親や教師からの「がんばれ」という励ましの言葉に強いストレスを感じる
この段階では、登校を無理に促すのは逆効果になる可能性が高く、むしろお子さまの心身の疲労を深めてしまう恐れがあります。
「なぜ学校に行けないの?」と原因を追及したり、「みんなは行っているのに」と比較したりするのではなく、「つらいね」「心配だね」といった共感的な声かけを心がけましょう。
この段階では、お子さまが自分の気持ちを整理できる時間と空間の確保が、特に重要になってきます。
第3段階:完全不登校期
学校を完全に休むようになり、不登校の状態が明確化する段階です。この時期、お子さまの心には強い罪悪感や無力感が生じ、自己否定的な感情が強まっていると考えられます。
生活面における変化
- 昼夜逆転など、生活リズムが大きく乱れる
- 一日中布団の中で過ごす日が多くなる
- 外出を極端に避けるようになる
学校に関する変化
- 学校にまったく行けない状態が続く
- 学校からの連絡に強い拒否感がある
- 同級生の話題や学校の話を完全に避けるようになる
心理面での変化
- 自己否定感が強まる
- 将来への不安や焦りで眠れない日が続く
- 部屋に引きこもりがちになる
この段階では、お子さまの心が最も傷つきやすい状態にあります。焦りや不安を抱えているお子さまに、親の立場での意見や正論、さらなるプレッシャーをかける言葉がけは避けましょう。
まずは「家にいていいんだよ」「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを態度で示し、家庭が安全な居場所になるよう整えます。お子さまのペースを尊重しながら、見守る姿勢を心がけましょう。
第4段階:不登校定着期
不登校の状態が日常の一部として定着する時期です。この段階では、お子さまなりに現状を受け入れ始める一方で、将来への不安や焦りも感じやすい時期です。
生活面における変化
- 独自の生活リズムが確立されてくる
- 基本的な生活習慣は少しずつ整い始める
- インターネットやゲームの時間が増える傾向にある
社会面における変化
- オンラインでのコミュニケーションを好む
- 学校以外の学習方法(通信教育やオンライン学習)に興味を示す場合がある
- フリースクールなど、新しい居場所に関心を持ち始める
心理面での変化
- 不登校の状況に対する罪悪感が和らぐ
- 「これからどうしよう」といった将来への不安が強まる
- 家族との関係が以前より安定してくる
- 自分なりの目標や興味を見つけ始める
この段階は、お子さまが自分のペースを見つけ「心の土台」を固める時期といえるでしょう。次のステップに向けた大切な準備期間ともとらえられます。
まずは、お子さまが興味を示す活動や学習方法を一緒に探してみましょう。そして、家庭内の役割や居場所を大切にしながら、少しずつ外の世界への興味を育んでいけるよう、穏やかに見守っていく姿勢が重要です。
第5段階:活動の再発期
お子さまが少しずつ外の世界に目を向け始める時期です。この段階は、新しい1歩を踏み出す勇気と、失敗への不安が交錯する繊細な時期かもしれません。
生活面における変化
- 生活リズムが徐々に整ってくる
- 身だしなみを整えるようになる
- 外出する時間が少しずつ増える
- 趣味や創作活動に打ち込むようになる
社会面における変化
- オンラインでの交流が活発になる
- フリースクールなどの新しい環境に足を運び始める
- 限られた人との交流を再開する
心理面での変化
- 新しいことへのチャレンジ意欲が芽生える
- 失敗への不安と期待が混在する
- 自己肯定感が少しずつ高まってくる
- 将来への希望が芽生え始める
保護者様は、お子さまの「やってみたい」気持ちを大切に受け止めてあげることが重要です。
失敗を恐れて一歩が踏み出せないときは、「急がなくていいよ」「できるときでいいよ」というメッセージを伝え、お子さまの意思を尊重しながら、小さな成功体験を積み重ねていけるよう支援しましょう。
第6段階:リハビリ期
学校や社会生活への復帰に向けて、具体的な準備や試行錯誤を始める段階です。この時期のお子さまは、前進と後退を繰り返しながら、少しずつ自信を取り戻していきます。
生活面における変化
- 規則正しい生活リズムが定着してくる
- 学校に行く準備を自分から始める
- 学習習慣が少しずつ形成される
社会面における変化
- 保健室登校や別室登校を試み始める
- 特定の授業だけ参加できるようなる
- 同級生との再会に向けた準備を始める
心理面での変化
- 「やってみよう」と前向きな気持ちが芽生える
- 失敗しても立ち直る力が育ってくる
- 自分の状況を客観的に見られるようになる
- 将来への具体的な展望を持ち始める
この段階にいるお子さまに、親の立場からのアドバイスや過剰な励ましは不要です。お子さまの行動を急かすのではなく、暖かく見守る姿勢が大切です。
たとえ後戻りしても、それは回復過程の一環だと受け止め、焦らず見守る姿勢を保ちましょう。
第7段階:完全登校・社会復帰
学校や社会生活への復帰が実現し、新たな日常を築いていく段階です。この時期は、これまでの経験を通じて得た強さと、新たな課題への挑戦が混在する時期でもあります。
生活面における変化
- 安定した登校が続けられるようになる
- 学校行事にも参加できるようになる
- 家庭でも落ち着いた生活を送れる
- 自主的な生活管理ができるようになる
社会面における変化
- 学校での居場所が見つかる
- グループ活動にも参加できるようになる
- 将来の進路について考え始める
心理面での変化
- 不登校経験を自分の一部として受け入れられる
- 困難を乗り越えた自分に自信を持つ
- 他者への共感力が高まる
- 新しい目標に向かって進む意欲が生まれる
これまでのお子さまの頑張りを認めてあげるとともに、必要なサポートは継続していきましょう。不登校の経験を肯定的に捉え、それを糧として次のステップに進んでいけるよう、温かく見守り続ける姿勢が大切です。
また、この経験を通じて育まれた親子の絆を大切にしながら、お子さまの自立を支援していきましょう。
不登校の段階に応じた対応方法
お子さまが不登校の段階を進むなかで、「心の土台」づくりは不可欠です。また、保護者様がどのように対応すればよいかはそれぞれの段階で異なります。お子さまの心を育むためには、適切にアプローチしていき親子の信頼関係を構築する必要があります。
ここでは、具体的な対応方法を解説します。
子どもの声に耳を傾けるコミュニケーション
お子さまの話を聴くとき、親の立場からのアドバイスや親としての想いを押し付けていませんか?
お子さまが不登校になる背景には、辛い経験や複雑な感情があります。特に、不登校初期の段階では、お子さまの気持ちに共感して話を丁寧に聴く姿勢が大切です。
- 否定せず受け止める:お子さまが抱える不安や不満を否定せず、「そう感じているんだね」と共感の言葉を返しましょう。
- 聞き役に徹する:説得やアドバイスを急がず、お子さまが自然に気持ちを話せる環境を作ります。途中で話を遮らないように注意しましょう。
- 表情や態度を観察する:言葉だけでなく、表情やしぐさにも注意を払い、お子さまの気持ちを汲み取ります。
不登校になり始めのころは、保護者様も動揺してお子さまをなんとかしようと気持ちが焦ってしまいがちです。しかし、お子さまに無条件に寄り添って、お子さまの気持ちを否定せず丁寧に親子のコミュニケーションを積み重ねていく過程こそが、お子さまに安心感を与えます。
親が抱える不安を解消する
不登校中期以降は、親御さんの不安を解消し安心感を育むことと同時に、お子さまの自己肯定感を高める環境が何よりも重要です。
お子さまが完全不登校になり、不登校が長引くにつれて保護者様の不安や孤独感も大きくなります。不安で押しつぶされそうになる気持ちを解消するには、以下の方法があります。
- 情報を収集する:不登校に関する信頼できる情報を収集し、状況を客観的に理解します。不登校の知識や不登校になるメカニズムがわかれば、不安は和らいでいくものです。
- 相談相手を持つ:家族や友人、専門家に気持ちを打ち明け、心の負担を軽減します。
- 自分を責めない:お子さまの不登校は必ずしも保護者様だけの責任ではありません。「今できる最善を尽くす」ことに意識を向けましょう。
保護者様が心の安定を取り戻せば、その安定はお子さまにも伝わります。お子さまへの対応にも余裕が生まれ、家庭が安心で安全な場所となるでしょう。
家庭が安心で安全な場所だとお子さまが実感できることで、次第に心が安定していきます。「自分は受け入れられている」という感覚を持つようになり、自己肯定感も自然に高まるでしょう。
外部支援を活用する
不登校は、保護者様とお子さまだけで解決するのが難しい場合もあります。不登校のどの段階においても、お子さまの様子の悪化や保護者様の不安が大きい場合は、外部の支援を活用することも検討してください。
- 学校や地域のサポート:スクールカウンセラーや担任教師と相談し、現状を共有します。面談を通じて支援や対策が得られるかもしれません。また、地域の教育相談センターに相談すれば、専門的な知識をもとに相談員が対応してくれます。
- 専門家によるサポート:不登校を支援するNPOや心理カウンセリング機関を利用します。第三者の視点から新たな解決策を得られる場合があります。
外部の力を借りるのは、保護者様の負担を軽減するだけではなく、お子さまにとっても新しい道を開くきっかけとなるでしょう。
「不登校こころの相談室ができること」
不登校には7つの段階があり、各段階でお子さまの心理状態や行動は大きく異なります。そのため、専門家による適切なサポートが、回復への重要な1歩となるでしょう。
不登校こころの相談室では、専門的な知識を持つカウンセラーが、オンラインでお子さまと保護者様の心に寄り添います。不登校支援の実績が豊富なカウンセラーが、お子さまの現在の段階を見極め、具体的な対応方法をお伝えします。
お子さまの不登校で悩んでいる保護者様は、まずは無料相談からお気軽にご利用ください。専門家に相談する過程で不安や焦りが和らぎ、お子さまとの向き合い方に新しい気づきが生まれるはずです。