目次
いじめとは?
いじめとは、特定の相手に対し、継続的に行われる精神的または身体的な苦痛を与える行為を指します。
文部科学省が定義する、いじめの概要は次の通りです。
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の関係性のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。
いじめは、単なる喧嘩や仲間内でのからかいとは異なります。
繰り返し行われ、いじめる側といじめられる側の間に力関係の差が存在する場合は、いじめとみなされます。
近年では、警察が介入するほど深刻で重大な問題となっています。
いじめの後遺症とは?
被害者の心身に傷を与えるいじめは、その瞬間だけでなく、被害者の人生に長く苦しみを与え続けることがあります。これが、いじめの後遺症です。
いじめの後遺症は、お子さまの性格やいじめの内容によって程度や表れ方が異なりますが、日常生活に大きな支障をきたす可能性があるものです。
具体的には、次の4つのような後遺症が挙げられます。
- 不登校になる
- 性格形成に影響する
- 将来の生活に影響する
- 心の病気を発症する
不登校になる
いじめの後遺症によって、不登校になることがあります。
いじめの経験は、学校という場所自体に強い嫌悪感や恐怖心を抱かせる原因となります。
いじめられた場所、いじめた人物、いじめを目撃した周囲の反応など、学校に関連するあらゆるものがトラウマの引き金となり、学校に行くことが精神的に大きな負担となるのです。
いじめによって傷つくと、たとえば学校に行こうとすると体調不良になったり、教室に入ることが不安でたまらなくなったりします。
このような状態が続くと、学校に行くことが不可能になり、不登校という状態に陥ってしまうのです。
いじめの後遺症によって不登校になることは珍しくありません。
性格形成に影響する
いじめの後遺症として、その後の性格形成に大きな影響を与えることがあります。いじめは、被害者の人生を変えてしまうほどの経験です。
いじめによって被害者は、自信を失ったり他人を信用できなくなったりすることがあります。傷ついた体験が、自己肯定感の低下や対人恐怖症、引きこもりなどの形で表れることも珍しくありません。
常に周囲の目を気にして自分の意見を言えなくなったり、孤立してしまうこともあるでしょう。
こういった性格の変化は、その後の対人関係や社会生活にも大きな支障をきたす可能性があるため、注意が必要です。
いじめの後遺症によって、被害者の性格が変化したり望ましくないものに形成されてしまったりすることがあります。
将来の生活に影響する
いじめの後遺症によって、将来の生活に深刻な影響を与える可能性があります。
いじめによるトラウマは、進学や就職、結婚などの人生の重要な場面に支障をきたす原因となることがあります。
いじめられた経験によって自信が持てず、強い意志を持って進路を選択できなくなったり、誰かと深い関係を築くことが怖くなったりするのです。
また、いじめによって不登校になった場合、出席日数不足や学力の低下から進路や就職の選択肢を狭めてしまうことがあります。
いじめが直接的に関係しているわけではなくとも、後遺症の一つだと言えるでしょう。
このように、いじめは将来の可能性を狭めてしまうだけでなく、生涯にわたって苦しむ原因となるものです。
心の病気を発症する
いじめの後遺症として、さまざまな心の病気を発症するリスクもあります。
代表的なものとして、次のような病気が挙げられます。
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 不安障害
- うつ病
詳しく見ていきましょう。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、いじめなどの強烈なトラウマ体験によって引き起こされる精神疾患です。
いじめの後遺症でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった場合、いじめの場面がフラッシュバックして蘇ったり、悪夢を見たりすることがあります。
また、いじめられていたときを思い出すような場所や人との交流を避けることもあります。
これらの症状は、日常生活に支障をきたすものです。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、薬物療法やカウンセリングによって症状改善が期待できるため、病気が疑われる場合は病院を受診しましょう。
不安障害
不安障害とは、過剰な不安や恐怖によって日常生活に支障をきたす精神疾患の総称です。
具体的には、パニック障害や強迫性障害などが含まれます。
いじめの後遺症として発症することがあり、常に不安を感じるようになったり、特定の状況に対して強い恐怖を感じるようになったりすることがあります。
いじめられていたときのように、何か悪いことが起こるのではないかと過剰に心配してしまうのです。
また、身体的な症状を伴うこともあります。特にパニック障害では、発作時に息切れや動悸が起こることが特徴です。
不安障害は、薬物療法と心理療法の併用によって完治が目指せる病気です。
過剰な不安が持続すると日常生活を送るのが困難になるため、早めに受診しましょう。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下などが持続的に続く精神疾患です。
いじめによって自信を失ったり、絶望感を感じたりすることが、うつ病の発症につながることがあります。
気分が落ち込んで何も楽しめない、やる気が起きない、睡眠不足や食欲不振に悩むといった症状が見られるときは、うつ病の可能性があります。
うつ病の多くの方が睡眠障害を併発しており、夜に眠れないことでますます考えすぎてしまったり強い不安を抱いたりするようになります。
自然治癒は難しく、放置すると悪化してしまいます。治療が困難となるため、早めに適切な治療を受けることが大切です。
いじめの後遺症を克服する方法
いじめによって後遺症を患うと、いじめられていたその瞬間だけでなく、その後の人生まで苦しみが続くことになります。
いじめられた経験をなかったことにはできませんが、後遺症を少しでも和らげ、前向きに歩んでいきたいですよね。
ここでは、いじめによる後遺症を克服する方法を5つ紹介します。
- セルフケアを習得する
- 周囲がサポートする
- 医療機関を受診する
- 相談機関を利用する
- オンラインカウンセリングを利用する
セルフケアを習得する
セルフケアを習得することは、いじめの後遺症を克服するための重要な第一歩となります。
セルフケアとは、自分自身で心身の状態を整え、ストレスを軽減するための方法です。
いじめの経験によって傷ついた心を癒し、自己肯定感を回復するために役立つでしょう。
たとえば、深呼吸や瞑想などのリラックス法は、特別な準備や道具も不要で簡単に試せるため、おすすめです。ゆっくりと深呼吸をするだけでも、心身の緊張をほぐすことができます。
また、認知行動療法という心理療法の中で取り入れられることの多い、「筋弛緩法」も心身の状態を整える効果があります。
筋弛緩法とは、意識的に身体の筋肉に力を入れて緊張状態にさせたあと、一気に脱力させるというリラックス方法です。
身体の緊張状態を解きほぐし、力が抜ける感覚を味わうことでリラックスすることができます。
上記のようなリラックス方法は、どこでも手軽に実践することができます。特に、就寝前に行うと質の高い睡眠につながることでしょう。
その他にも、適度な運動を取り入れてみるのもよいでしょう。
ウォーキング、ジョギング、ストレッチなど、適度な運動は、心身のリフレッシュに効果的です。
また、十分な睡眠やバランスのよい食事も、心身の健康を保つ上では欠かせません。
自分が心地よいと思う過ごし方や生活リズムを見つけ、心身の状態を整えましょう。
周囲がサポートする
周囲のサポートは、いじめの後遺症を克服する上で非常に大きな力となります。
いじめの被害者は、家族や友人、教師などの周囲の人が理解を示し、寄り添ってくれることで孤独感や孤立感を和らげ、安心感を得ることができます。
特別なことができなくても、話を聞いたり共感したりするだけで構いません。
被害者にとっては、自分のことを無条件に受け入れ認めてくれる存在が何よりも大切です。
なお、被害者の傷がまだ癒えていない段階で無理に励ましたり、安易に「大丈夫」と声をかけないように注意しましょう。
被害者が「自分の悩みは軽いものだと思われた」と受け取ってしまうと、より抑うつ的な気分になってしまいます。
被害者にとっては、信頼できる人がそばにいてくれることが心の支えとなります。周囲の温かいサポートは、いじめの後遺症からの回復を大きく後押しします。
いじめ問題への対処法については、こちらの記事でさらに詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
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医療機関を受診する
医療機関の受診は、専門的な治療によっていじめの後遺症による心身の不調を改善する有効な手段です。
いじめによって悩んだときの相談先は、主に精神科や心療内科です。医師による診察のもと、薬物療法やカウンセリングなどを受けることができます。
いじめの後遺症によって心に大きな傷を抱えている場合、精神科で睡眠薬や抗うつ薬などを処方してもらうことで、症状の改善を図ることができます。
まずは薬で症状を抑え、状態を安定させてからカウンセリングなどを通してケアしていくのが基本です。
また、ストレスや心の問題が原因で腹痛やめまいといった身体症状が表れている場合は、心療内科の受診がおすすめです。
心療内科での治療によって、ストレスが原因で起こる身体症状に対して心身両面からのアプローチを受けることができます。
いじめによる後遺症がつらいときは、医療機関を受診してみましょう。
相談機関を利用する
医療機関以外にも、 相談機関を利用することで専門家のアドバイスや支援を受けることができ、問題解決の糸口を見つけることができます。
たとえば、24時間子供SOSダイヤルでは、いじめに関する専門的なアドバイスを受けることができます。現状に合わせて、具体的な対応策や相談窓口の情報などを教えてもらえるため、心強い相談先だと言えるでしょう。
また、児童相談所では、子どもに関するさまざまな相談を受け付けており、いじめ問題についても相談することができます。
このように、学校や病院以外にもいじめの悩みを相談できる機関はいくつか存在します。
お子さまや保護者様が「使いやすい」「相談しやすい」と感じるところを頼ってみるのもよいでしょう。
オンラインカウンセリングを利用する
いじめに関する相談先として、オンラインカウンセリングを利用するという方法もあります。
オンラインカウンセリングは、場所や時間に縛られずに、気軽に専門家のカウンセリングを受けることができる便利な方法です。
自宅などリラックスできる環境でカウンセリングを受けることができるため、外出が難しいお子さまや保護者様、対面でのカウンセリングに抵抗がある方でも利用しやすいというメリットがあります。
また、夜間や早朝など、自分の都合の良い時間にカウンセリングを受けることができるサービスもあります。
たとえば、学校や仕事が終わった後など、自分の都合に合わせてカウンセリングを受けることができるのです。
精神科や心療内科のカウンセリングは予約が取りにくかったり、長時間待ったりすることも珍しくありません。
その点、オンラインカウンセリングであれば時間に融通を利かせることができます。
いじめの後遺症から回復する手段として、まずは手軽に試せるオンラインカウンセリングを利用してみてはいかがでしょうか。
いじめの後遺症に悩んだときは「不登校こころの相談室」へ
いじめの体験は被害者の心に大きな傷を残し、その後の人生に後遺症として表れることがあります。
日常生活に支障をきたしたり、心の病気を発症する可能性もあります。
いじめの後遺症に悩んだときは、できるだけ専門家の力を借りて相談するようにしましょう。
「不登校こころの相談室」では、オンラインカウンセリングを通していじめに関する悩みを聞き、相談者の方に合ったサポートをすることができます。
心に関するプロである臨床心理士や、国家資格である公認心理師資格を持ったカウンセラーがサポートするため、安心して相談してみてくださいね。
利用に悩むときは、まずは無料相談で「不登校こころの相談室」を詳しく知ることができます。
相談の流れや料金に関する疑問は、こちらでご相談ください。
いじめの後遺症での悩みを軽減するための一つの方法として、ぜひ利用を検討してみてくださいね。